ケアマネ業務の人気度は低迷〜介護職員との賃金逆転でケアマネ不足に懸念

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ケアマネ業務の人気度は低迷〜介護職員との賃金逆転でケアマネ不足に懸念

NCCU「ケアマネが憧れの職種ではなくなってしまう」 介護職員との賃金逆転を懸念

介護の現場で働く人でつくる労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」は1月31日に会見を開き、昨年の賃金実態調査の結果を公表した。

介護職員の賃金が相対的に高く上がり、少しずつケアマネジャーの水準に近づいてきていると報告。介護報酬の「処遇改善加算」の拡充が背景にあり、今年10月の賃上げでこうした傾向がより顕著になるとの見方を示した。

村上久美子政策部門長は会見で、「このままいくと賃金の上がり方の格差がさらに大きくなる。介護職員がケアマネに追いつく日がそのうち来そうだ」と分析。「これまでケアマネは憧れの職種とみられてきたが、憧れでもなんでもなくなってしまうと懸念している。介護職員の賃金が上がるのはありがたいが、これは悩ましい問題だ」と述べた。

□上がり幅に大きな差

既存の処遇改善加算は介護職員のみが対象。ケアマネは基本的に恩恵を受けられない。今年10月の改定で創設される新たな加算も、居宅介護支援事業所は算定できないルールとされた。リーダー級の介護福祉士の中には賃金が月8万円上がり、現状維持のケアマネを上回る人もいるとみられる。

NCCUが31日に公表した調査の結果は以下の通りだ。ケアマネと介護職員の賃金の差を昨年8月でみると、訪問系が5万26円、サ責が3万4575円、入所系が4万3606円、通所系が6万1336円となっている。昨年3月と比べた増加額をそれぞれみると、介護職員の方が大きくなっている。

NCCUによると、国による処遇改善が始まった2009年(当時は交付金)から2018年までの賃金の増加額は、例えば訪問系介護員で4万5214円、通所系介護員で4万9888円。一方、ケアマネは1万2646円の伸びにとどまっている。

□「納得がいかない」

NCCUはこれまで、今年10月に新設される加算の対象から居宅のケアマネが外されたことに異論を唱えてきた。村上政策部門長はこの日も、「非常に不本意。納得がいかない」と持論を展開。「介護福祉士の資格を持っているケアマネは非常に多い。国は経験・技能のある介護職員を重視すると言うが、それならやはりケアマネを含めるべきではないか」と訴えた。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg336.html

ケアマネへの待遇の悪化

介護の労働組合である日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、2009年から始まった介護職員処遇改善交付金をきっかけに賃金実態調査を開始し、介護現場で働く者の賃金と他業種との賃金格差の是正を訴え続けてきた。

2019年10月に新介護職員処遇改善加算が新たに設けられることになり、世の中に介護職員の賃金水準が適切でないことが浸透したとして、この賃金実態調査は一旦終了すると、NCCUの染川事務局長は1月31日に行われた記者報告会で述べた。

「2018年賃金実態調査」(*1)では、定点観測的に毎年行っている3月と8月の月額賃金の変化などの調査を行っている。

(*1)2018年賃金実態調査について
http://www.nccu.gr.jp/topics/detail.php?SELECT_ID=201902040001

今回の調査の結果を受け、村上久美子政策部門長は職種別の賃金の上がり方の格差がさらに大きくなり、賃金の伸び率の低いケアマネ職の魅力が減少してしまう悩ましい問題だと述べた。

また、今年10月に新設される加算の対象から居宅のケアマネが外されたことについて非常に不本意と話し、介護福祉士の資格を持っているケアマネも、国の言う「経験・技能のある介護職員を重視する」に含めるべきではないかと訴えた。

ケアマネの受験者数も激減

「2018年賃金実態調査」を参考にさせてもらうと、介護福祉士の資格を持ったケアマネは86.8%にも上る。
このため介護福祉士の賃金が上昇を続けケアマネの賃金を上回った場合、介護福祉士の資格を持つケアマネは介護職へ転向する可能性がある。

また、2018年度からケアマネ試験受験資格要件が改正され、全国の受験者数が49,333人・合格者が4,990人にまで激減している。(*2)

(*2)第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00003.html

これらのことから、今度は介護保険制度の中核を担うケアマネの数が減少していくと考える。

ケアマネ不足への対策を進めるべきでは

そしてケアマネの減少理由はそれだけではない。
ケアマネ業務は大変というイメージが介護業界の中で囁かれ、既にケアマネ業務に従事したいと夢を抱いている者の数も減少し始めている。

これは私のケースだが、2017年のケアマネ資格合格者を対象に行われる実務研修において、参加していたケアマネ試験合格者40人に実務研修が終了したのちにケアマネ業務に就くのか聞いたところ、ケアマネ業務に就くと答えた者はわずか4人であった。

残りの者は現職種のままでケアマネ業務に就くことを予定していないとのことだ。理由は「責任が重大で大変だから」「他職種との連携が大変」等だった。

なかには実務研修が終わっても登録はしないという者もいた。
このことからケアマネ試験を受け実務研修を修了した者のうち、実際ケアマネ業務に従事するものはわずかしかいないと考えられる。

2025年の大介護時代を迎えるにあたり、ケアマネ不足が懸念される。
介護職の処遇改善とともに、ケアマネの処遇改善も検討していくことが必要になると思われる。

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