介護報酬改定に関するQ&AのVol.8を発表〜訪問リハに必要なのは専門医の診療と指示なのでは?

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介護報酬改定に関するQ&AのVol.8を発表〜訪問リハに必要なのは専門医の診療と指示なのでは?

介護報酬改定のQ&A第8弾! 訪問リハの減算、要件の一部を見直し

厚生労働省は5日、今年度の介護報酬改定に関するQ&AのVol.8を出した。介護保険最新情報のVol.697で広く周知している。

今回の問答は1つだけ。訪問リハビリテーションの報酬体系のうち、事業所の医師による診察を経ないでサービスを提供した場合の減算について、要件の一部を見直す方針を示している。

訪問リハは今年度の改定で、事業所に専任の常勤医師を配置することが義務付けられた。併設する病院や診療所、老健などの医師の兼務は可能。サービスの提供にあたっては、その医師がリハビリ計画の作成にかかる診療を行わなければいけない決まりとなっている。

ただし例外もある。利用者が別の医療機関の医師から計画的な医学管理を受けているケースだ。訪問リハの事業所はその医師から情報提供を受ければサービスに入れる。ただし、この場合の報酬は20単位/回の減算となる。

新たなQ&AのVol.8は、この“別の医療機関の医師”に関する内容だ。厚労省は今年度の改定で、「適切な研修を修了していること」との要件を設定。1年間の猶予期間を経て今年4月から適用するとしていたが、今回、「2021年3月31日までに修了を予定していればよい」などと緩和した。「研修の機会も少なく受講が難しい」「せっかくのサービスが継続できなくなってしまう」。現場の医師などから寄せられたこうした声に配慮した格好だ。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg345.html

「事業所の医師の診察なしに訪問リハビリ提供した場合」の減算について見直しに

平成30年の介護報酬改定のQ&A「【訪問リハ】事業所の医師が診察せずにリハビリを提供した場合の減算について」が、2月5日に厚生労働省より周知された。(*1)

(*1)「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.8)(平成31年2月5日)」の送付について
http://www.care-mane.com/pdf/feature/q&a/vol697.pdf

訪問リハビリとは、自宅へ理学療法士(PT)・作業療法賞(OT)・言語聴覚士(ST)が訪問しリハビリ計画書に沿ったリハビリを自宅で実施できる介護保険サービスである。

リハビリ計画書は医師の診療の後リハビリの指示が出され、PT・OT・STが指示内容に合ったリハビリを計画・実施するための書類だ。

これまで診療を行う医師について特段の言及がなかったため、訪問リハビリを利用している利用者は訪問リハビリを実施する事業所の医師以外に、かかりつけ医(主治医)の診療と指示を受けている場合が多かった。

しかし、平成30年の介護報酬改定では、訪問リハビリを実施する事業所の医師が診療を行わなかった場合20単位の減算が新設された。(*2・P44~)

(*2・P44~)平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000196994.pdf

そのため訪問リハビリ事業所は事業所の医師に利用者の診療をしてもらうように進めていくはずだ。

主治医の変更に対して利用者のメリットは?

しかも20単位の減算で訪問リハビリ事業所以外の医師が診療を行う場合には、以下の要件がある。

・指定(介護予防)訪問リハビリテーション事業所の利用者が当該事業所とは別の医療機関の医師による計画的な医学的管理を受けている場合であって、当該事業所の医師が、計画的な医学的管理を行っている医師から、当該利用者に関する情報の提供を受けていること
・当該計画的な医学的管理を行っている医師が適切な研修の修了等をしていること。
・当該情報の提供を受けた指定(介護予防)訪問リハビリテーション事業所の医師が、当該情報を踏まえ、リハビリテーション計画を作成すること。

※引用:平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について(P53)

万が一主治医が必要な研修などを受けていない場合は、訪問リハビリのサービスが途切れてしまう。

そうなるとサービスが途切れないようにするために、利用者も今までずっとかかりつけ医として親しんできた主治医の元を離れ、あらたに訪問リハビリ事業所の医師に主治医を変えることになる。
ここに何かメリットはあるのだろうかと考えてしまう。

訪問リハビリ事業所に専任の常勤医師の配置の必須化が求められることになったのは良いことであるが、その前に利用者と主治医の間のやりとりが心配だ。
「訪問リハビリを受けたいから主治医を変える。」など、今までお世話になった主治医に気軽には言えない。

また、訪問リハビリが終了したあと、自宅近くの元の主治医にお世話になりたいと思っていても躊躇してしまうのではないか。

利用者がサービス利用を躊躇するような状況にしないために

今回のQ&Aでは、「医師の適切な研修の終了等をしていること」の経過措置が平成31年3月31日から平成33年3月31日にまで2年間延長された。

延長されたということは、医師の適切な研修が思うように進んでいないと案ずるが如何か。
忙しい医師たちが他の医療機関の減算を回避するために、自身の時間を削って研修に参加するのは後回しになっても仕方のないことだ。

医師間で情報共有が確実にされれば、診療はどの医師が行っても同様である。
脳溢血の利用者は脳外科の医師の医学的管理の基、糖尿の利用者は循環器系の医師の医学的管理の基で良いではないか。

まずは今年度の介護報酬改定で記された医師が指示する下記内容、

リハビリテーションマネジメント加算の算定要件に以下の内容を加える。

・指定訪問リハビリテーション事業所の医師が、指定訪問リハビリテーションの実施に当たり、当該事業所の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に対し、利用者に対する当該リハビリテーションの目的に加えて、当該リハビリテーション開始前又は実施中の留意事項、やむを得ず当該リハビリテーションを中止する際の基準、当該リハビリテーションにおける利用者に対する負荷等のうちいずれか1以上の指示を行うこと。

※引用:平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について(P46)

これらの内いずれか1以上の指示を行うこととされたが、これら全ての指示を行うことから始めれば、訪問リハビリを実施する上で問題は何もないはずだ。
実際の現場ではスタッフに促され、「リハビリを開始する」の一筆しか書かない医師だって実在しているのだ。

減算のために、利用者が必要とするサービスを受けるのに思い留まるような改定は好ましくないと思われるが如何か。

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