介護記録、情報共有、請求業務が一気通貫できる介護ソフトは実現されるのか?

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介護記録、情報共有、請求業務が一気通貫できる介護ソフトは実現されるのか?

AIが記録を自動作成 介護職は選ぶだけ 4月から販売へ 三菱電機ビジネスシステム

三菱電機ビジネスシステムは今年4月から、介護記録の作成にかかる負担を軽減するAIツール「記録NAVI」の販売を始める。東京ビッグサイトで6日からスタートした展示会「CareTEX2019」に出展。訪れた業界の関係者に、「介護職員の事務を効率化できる」とPRした。

現場で実際に作成された記録を学んだAIが、そのシーンで使われる可能性の高い文例を自動で複数作成。そのどれかを選択すると、同様に続きの選択肢が提示される。介護職員は文章を書く必要がない。順に選んでいくだけで簡単に統一的な記録が作れる設計だ。今後、2020年度末までに介護施設を中心として1000社の導入を目指すという。

「記録NAVI」は施設での利用を想定したパソコンソフト。Windows対応でOSにインストールして使う。利用料はPC1台につき月額500円(税別)。

三菱電機ビジネスシステムは、「介護職員が利用者と向き合う時間が増え、サービスの質の向上につながる」としている。

選択肢の文例や作成した記録を全てひらがなで表示することも可能。増加が見込まれる外国人の利便性に配慮した機能だ。AIは随時最新版に更新される。蓄積されていく膨大な記録を解析することで、利用者の事故や病気のリスクを検知・把握できる仕組みの構築につなげていく − 。そんな将来ビジョンも描いている。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg347.html

介護記録の作成にAIが活躍

今回三菱ビジネスシステムが4月から販売予定だと発表した「記録NAVI」は、AIツールを使って選択するだけで介護記録が作成できてしまうという優れものである。(*1)

(*1)介護AI入力予測ツール「記録NAVI」の開発及び発売開始~AIで作成した文例を選ぶだけで、介護記録が作成できます~
https://www.melb.co.jp/newsrelease/newsrelease_1206.html

実際の現場の記録を既に学んだAIが状況に合った選択項目を表示していくので、介護士は順番に選択肢を選んでいくだけでよい。
介護現場でよく記入する「特変なし」という文言を記入するより簡単かもしれない。

三菱ビジネスシステムは2020年度末までに介護施設を中心として1000社の導入を目指している。
利用料もPC1台につき月額500円(税別)と安価であり、すぐにでも使用したいソフトだ。

介護ソフトやタブレット端末等に係る費用を助成する流れも

また、平成31年1月18日に行われた全国厚生労働関係部局長会議では、介護サービス現場の改善について地域医療介護総合確保基金(介護分)を活用した介護事業所に対する業務改善支援及びICT導入支援を平成31年度新規メニューとして追加すると説明があった。(*2)

(*2)老健局 重点事項説明資料 平成31年1月18日(金) 全国厚生労働関係部局長会議
https://www.mhlw.go.jp/topics/2019/01/dl/7_roken-01.pdf

ICT導入支援事業の内容は、介護分野におけるICT化を抜本的に進めるためICTを活用して介護記録から請求業務までが一気通貫で行うことができるよう、介護ソフト及びタブレット端末等に係る購入費用の一部を助成するというものだ。詳細は下記の通り。

【対象事業所】介護事業所
【要件】介護ソフトは介護記録、情報共有、請求業務が一気通貫であること等
【補助額(案)】(1事業所あたり)対象経費の1/2以内(上限30万円)

※引用:老健局 重点事項説明資料 平成31年1月18日(金) 全国厚生労働関係部局長会議(P18)

実際の現場の負担を代替もしくは最適化できるかどうか

今回のプレリリースの内容だけでは詳細が分かりかねるが、この「記録NAVI」は地域医療介護総合確保基金(介護分)の補助が受けられる介護記録・情報共有・請求業務が一気通貫されているのか気になるところである。
補助金の下りるソフトでなければ導入を見送る事業主も多いであろう。

また、介護記録は施設入所者が対象者だけではないことを忘れてはいけない。
同施設サービスの通所サービスの利用者も介護記録が必要である。

施設でよく抜け落ちるのが、通所サービスの利用者がショートステイを利用した時の引き継ぎだ。
在宅での様子やショートステイ中の状態変化が伝わっていなかったために、適切なケアや家族フォローが出来ず職員間で揉め事になるといったケースを目にする。

引き継ぎの多い介護施設で使用する介護ソフトは、施設全体全てを網羅できなくてはならない。
いくつもバラバラになっているパーツを一気通貫でき、誰でも簡単に操作できる転記不要の介護ソフトが、「新しい経済政策パッケージ」が言う2020年までに登場するのだろうか。

あれもこれもとやり方が変わっていくだけでは、説明を聞く時間や操作に慣れる時間が増えるだけで職員の負担増になるだけだと考える。
介護ソフトを導入する事業主は、職員が使いやすいソフトをじっくり検証してから導入していただきたい。

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