施設ケアマネが介護士兼務で常勤換算していれば、特定処遇改善加算の対象となるのか?

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施設ケアマネが介護士兼務で常勤換算していれば、特定処遇改善加算の対象となるのか?

ケアマネと介護福祉士の賃金が逆転する、なんてセコい話はしないで欲しい

結城康博
淑徳大学 総合福祉学部 社会福祉学科 教授

介護職員の賃上げに向けて今年10月から創設される新たな処遇改善加算の内容が決まりました。居宅介護支援が対象から外れたこと、ベテラン介護福祉士とケアマネジャーの給料が逆転することについて少し議論になっていたので、私も自分の意見を言っておこうと思います。

まず、私にもケアマネとして6年ほど働いた経験があります。最近はなんだか忘れられているような気もしますが…。それは置いておくとして、その経験を重要なベースとして日々の研究に取り組んできましたので、ケアマネとして生きてきた自負があります。ですからこれは1人の当事者の意見と捉えて頂きたい。

□今の状況は本当に危機的

新加算の対象から居宅が外れたこと、これはやはりやむを得ないでしょう。今回の賃上げは人手不足の解消が目的で、足りないのは他ならぬ介護職員なんですから。はっきり言ってケアマネは関係ありません。この業界は介護職員がたくさんいないと成り立たないんです。ケアマネだって介護職員がいないと仕事にならないでしょう。

私は大学で人材を育て、これまで多くの卒業生を介護の現場へ送り出してきました。仕事を通じてつくづく感じるのは、今の人手不足が本当に危機的な状況にあるということです。このままでは確実に崩壊するでしょう。ですから介護職員にプライオリティを置く方針を支持します。ただでさえ少ないリソースをケアマネに使うべきではありません。

□より大局的な視点で

ベテラン介護福祉士とケアマネの給料が逆転する、という話は一部のメディアが騒いでいるだけですよね。もし給料の逆転に納得がいかない、あるいは苛立っているケアマネがいるとしたら、私は「そんなセコい話はやめてくれ」と言いたい。この国には専門職としてのプライドと良識を兼ね備えたケアマネが数多くいますが、そういう方々ならそんなセコい考えには到底至らないでしょう。

“10年戦士”のリーダー級の介護福祉士がケアマネより高い給料をもらう − 。どこかおかしいところがありますか? ないですよね。言うまでもなく介護の資格に妙な上下関係はありません。

繰り返しになりますが、圧倒的に不足しているのは介護職員です。とりわけ訪問介護のサ責などは非常に深刻でしょう。したがって、他の産業の水準も意識した賃上げを実施することにしたんです。できるだけ多くの方に入ってきて頂けるように。辞めて去っていく方をなんとか減らせるように。私も決してこれで十分だ、完璧だとは思いませんが、介護業界にとって非常に重要なことなのは間違いないでしょう。この前向きな動きを皆で一丸となって良い方向へ持っていかなければいけません。

それなのに給料が逆転するとかしないとか、そういう実にくだらないことにとらわれる人にソーシャルワーカーが務まるのでしょうか? 到底そうは思えません。少しでも多くお金をもらうことにこだわりたい人は、どうぞ介護職員に戻って頂きたい。ケアマネならもっと大局的な視点を持つべきです。もちろんメディアにも大局的な視点を持ってもらいたい。

言いたいことはまだまだあります。例えば、「ケアマネの担い手がいなくなる」「賃金バランスが崩れて現場に亀裂が入る」といった指摘が出ていますよね。加えて政策的な提案もしたいのですが、長くなりそうなのでまた次回と致します。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg378.html

介護現場では介護士兼務するケアマネも

3月4日、淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科の結城康博教授のコラムを読ませていただいた。

そのコラムは、介護職員の今年10月から創設される介護職員等特定処遇改善加算について、今回のベテラン介護士の賃上げは介護職の危機的な人手不足の解消が目的であり居宅のケアマネは関係ない、ケアマネと介護福祉士の賃金が逆転する、なんてセコい話はしないで欲しい、介護の資格に妙な上下関係はないといった内容であった。

結城教授の考えの通り、今回の介護職員等特定処遇改善加算は介護士不足を解消するための加算であり、ケアマネは基本介護業務を行わないため、算定要件から外れることはいうまでもない。
多くの居宅ケアマネ達はベテラン介護士の処遇が大々的に改善されることに安堵していることであろう。

しかし施設現場は違う。
特に現時点で介護職員が不足している施設では、施設ケアマネも介護士兼務として現場に従事しているケースが多い。
施設は現場主体であり、ケアマネ業務より優先されるのは当たり前のことである。

そのため兼務をしている施設ケアマネは、現場に頼まれれば介護業務のシフトに入り、合間を縫ってケアマネ業務をこなしている。
もちろん通常のケアマネ業務は終わらず、サービス残業で賄っているケアマネもいるようだ。

加算対象の不明瞭さに不安

介護職員等特定処遇改善加算は、施設内であれば分配が可能であるが、10年以上の介護護士の資格を持ち、さらに介護業務を実際に兼務している施設ケアマネは、加算の対象になるのかどうか気になっている者も多い。

兼務している実状というより常勤換算1として申請していればこれまでの処遇改善加算のように算定要件に含まれるのであろうか。
そうであれば形式上兼務ではないにも関わらず、頻回に介護現場のシフトに入っている10年以上の介護士資格を持つ施設ケアマネは介護士兼務にし、介護士としても常勤換算をしてもらいたい。

現時点で10年以上のベテラン介護士としか表記されていないので定かではないが、今後Q&Aで詳細が分かることになるはずだ。

また、現場が好きで今でも介護士に戻りたいと話す居宅ケアマネも多い。
それは身体の不調や事業所の方針で致し方なくケアマネになった者だ。
私の近くには10年以上に及ぶ介護業務で肘を壊し、ペットボトルの蓋さえ道具を使わなければ自力で開けられないケアマネや、事業主の鶴の一声で否応が無しにケアマネになった者もいる。

自己管理ができていない・自分の意見を伝えられないからだと言われてしまえばそれまでだが、介護士に戻りたくても戻れないケアマネがいることは事実である。

個々の専門性に優劣はない

こうしたケアマネ達の悔やまれる思いや未だ明らかになっていない加算の詳細事項に対しての不明点が、メディアなどに「賃金逆転」と誇大化されてしまったのではないかと考える。

そして結城教授の言うとおり介護の資格に上下関係などない。
互いに尊重し合いながら専門性を発揮し、連携を図りながら利用者の自立した生活のために支援をしていくことに、どの専門職も変わりはないのだ。

介護職員等特定処遇改善加算で介護士の処遇が改善されれば、介護業界全体が活気付くことになるかもしれないということに期待を寄せたい。
しかし来年10月までは介護職員等特定処遇改善加算について、まだまだ多くの意見が飛び交いそうである。

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