リハマネⅣの「VISIT」に続く介護の「CHASE」〜科学的自立支援の情報収集は間に合うのか?

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リハマネⅣの「VISIT」に続く介護の「CHASE」〜科学的自立支援の情報収集は間に合うのか?

【科学的介護】エビデンス収集、まずは重要なものから少しずつ… 来年度にも試行

2020年度から運用を本格的に開始する − 。政府は今年度の「未来投資戦略」にそう書いて閣議決定した。とはいえまずは可能な範囲から、少しずつエビデンスを集めていく流れとなりそうだ。

厚生労働省は7日、いわゆる「科学的介護」を展開していく方策を話し合う有識者会議の会合を開いた。新たに構築するデータベース「CHASE(チェイス)」への情報の蓄積を、予定通り2020年度からスタートさせる方針を確認。ただし、現場にかかる事務負担ができるだけ重くならないように配慮して、まずは必要最小限に絞った収集とすることに決めた。

今年の夏までに、2020年度から実際に集め始める情報の中身を選定する。システムの整備を急ぎつつ、早ければ来年度中にもトライアルに着手するという。現場にも協力を呼びかけていくが、2020年度はモデル事業も並行して進めていくプランを描いており、試行的な意味合いの強い年となりそうだ。このプロセスを経て、2021年度の介護報酬改定でどんな手を打つかが最大の焦点となる。

□次期改定、インセンティブが俎上に

ビッグデータを紐解き、自立支援や重度化防止の観点で相対的に効果が高いアプローチを明らかにし、希望する利用者へ積極的に提供していく − 。それが政府の目指す科学的介護だ。サービスの質の向上や給付費の抑制に結びつける狙いがある。キープレイヤーは「CHASE」。ケアの内容や利用者の変化などに関する情報を収集・蓄積し、エビデンスを確立するプロセスで中核的な役割を担う。

厚労省は昨年3月に「CHASE」の初期仕様案をまとめているが、集まったデータの信頼性・妥当性を十分に確保すること、なるべく現場に事務負担をかけないことなどを勘案し、当初の必須項目、任意項目、聞き方などを検討していく。

2021年度の改定に向けては、多くの事業所から協力を得るための仕掛けを議論していく構え。情報の提供を加算の要件に加える、情報を提供すればより高い単位数を与える、といったインセンティブが改めて俎上に載る見通しだ。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg386.html

ビッグデータの活用を本格化へ

2017年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」にて取り上げられた、次世代ヘルスケア・システムの構築の政策課題と施策の目標において、自立支援・重度化防止の効果が科学的に裏付けられた介護を実現するため、必要なデータを収集・ 分析するためのデータベースを構築する方針が示された件について、「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」の第6回有識者会議(*1)が2019年3月6日に行われた。

(*1)科学的裏付けに基づく介護に係る検討会(第6回)議事次第
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000485919.pdf

健康寿命を延伸するために、科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護サービスの方法論を確立して普及させ、効果的に自立支援を目指すという内容だ。

どのような状態に対してどのような支援をすれば自立につながるか明らかにするための、必要なデータを収集・分析するデータベース(CHASE)を新たに構築し2020年度に本格運用していくとのこと。(*2)

(*2)データヘルス改革で 実現するサービスと工程表 (平成31年2月26日現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000485925.pdf

今後、現在別々になっている健康・医療・介護システムの連結と、介護分野では現行のリハビリテーション計画書等の情報データベース(VISIT)に加え、新たに介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース(CHASE)を使用し、自立支援・重度化防止を科学的に分析していくことになる。

CHASEで収集する初期項目とは?

CHASEで必要となる初期項目は、サービス事業所の介護記録等のデータやケアマネジャー等が行った利用者の状態評価のデータのうち、電子的に取得されている可能性の高い265項目を予定しているとのこと。

項目は今後随時見直しをしていく予定であり、項目全てを埋める必要はないとしている。

収集する具体的項目(一部抜粋)(*3)

  • 栄養マネジメントに関する情報(身長・体重・血清アルブミン値・食事摂取量・水分摂取量)
  • 経口移行・維持に関する情報( 経口摂取の状態<歯又は使用中の義歯がある・食事介助が必要である>)
  • 口腔機能向上に関する情報(かかりつけ歯科医・改定水飲みテスト<むせる・呼吸切迫・嚥下あり>)
  • 個別機能訓練に関する情報(自分で食べる<興味がある・してみたい・している>)
  • アセスメント等に関する情報(食事の回数<一日の食事の回数>)
  • 認知症に関する情報(改定長谷川式認知症スケール(HDS-R)<HDS-Rの値を記載>・同じことを何度も何度も聞く )
  • 日常生活動作に関する情報(Barthel Index・FIM)

(*3)介護分野における今後のエビデンスの蓄積に向けて収集すべき情報について(中間とりまとめ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000485928.pdf

しかし一部の具体的項目についてだけでもリハビリのデータベース(VISIT)と重複している部分がある。
元々リハビリ計画書はケアマネの居宅計画書を元に作成するものだ。
項目の中にある基本情報やアセスメントに関する部分はもちろん重複してくる。

そして個別機能訓練に関する部分や認知症に関する長谷川式認知症スケールなどはリハビリの専門分野でVISITの項目にもある。
そのためログイン後にVISITのリハマネⅣを利用している利用者かどうか選択できれば重複することはないと思うが如何か。

事業所単位での細かい見解のすり合わせも必要に

また今回のCHASEは、ただ単純にデータ収集をしたいだけであり、多方面から利用者個人の経過を追うということではなさそうであるが、各サービス事業所間の見解の違いなどはどう整合性をつけていくのか気になるところである。

これまで各サービス事業所はケアマネに情報提供を行いケアマネが全て情報を把握し、自立支援に向けた支援を考え各サービス事業所へフィードバックしていたが、今度は各サービス事業所間で見解の違う情報が入力されていくこともあるはずだ。

その他にも、CHASEの目的がデータ収集だけであるなら算定要件をもっと簡易的なものにした方が良い。
例えばVISITのリハマネⅣの算定要件はリハマネⅢの算定要件を満たしていなければならない。

医師・家族など関係者を含めた月に1度(半年間まで)のリハマネ会議の開催や医師からの説明など、利用者全員を対象に行うことが難しい算定要件である。
これでは容易にデータが集まらない。

利用者負担も不安材料?

利用者負担についてもそうだ。VISITのリハマネⅣは1020単位である。
利用者負担が増えていく中、国に情報提供をするために1020単位かかるサービスを快く引き受けてくれる利用者ばかりではない。

利用者側にもメリットがなければ更にデータ収集に時間が掛かると考える。

国は本年度中にケアの分類法等のデータ収集様式を作成し来年度中にデータベースの構築を開始、2019年度に試行運用を行い2020年度の本格運用開始を目指すとしている。

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