フィットネスクラブがヘルス事業として介護予防事業に参入か?逼迫する社会保障費と複雑化する介護保険事業

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フィットネスクラブがヘルス事業として介護予防事業に参入か?逼迫する社会保障費と複雑化する介護保険事業

高齢者サロンを大幅拡充 厚労省、夏にも具体策 スポーツジムとの連携も

厚生労働省は4月から、地域の介護予防の取り組みをさらに推進していく方策を検討する有識者会議を新たに立ち上げる。市町村が開催する「通いの場」の展開、機能強化がメインテーマだ。

夏頃にも具体的な施策の方向性を示す。その後の予算事業の企画や制度改正につなげていく考えだ。25日の審議会で提案し、委員から大筋で了承を得た。

サロン、カフェ、健康教室…。そのネーミングも多様な「通いの場」は、介護保険の総合事業の枠組みで開かれている。厚労省によると、2017年度の時点で実践している市町村は1506。開催頻度はまちまちだが、全体の86.5%にのぼっている。運動・体操や認知症予防、趣味活動、茶話会、会食など内容は幅広い。

厚労省はこうした「通いの場」をこれから大幅に拡充していく方針。「介護予防だけでなく地域づくりを進めていく観点からも期待が大きい」。担当者はそう話す。この事業を健康寿命の延伸に向けた施策の柱に育てる構想を抱いている。

厚労省は昨年来、健診などの保健事業と一体的に行って医療の視点を補完する計画を進めてきており、今国会にはその関連法案を提出した。新たな有識者会議では、より大きな成果をあげていくための運営方法が主なテーマとなる。保健師や栄養士、歯科衛生士、リハ職といった専門職の関わり方は重要な切り口だ。民間のスポーツジムやフィットネスクラブなどとの連携も1つの論点となる。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg374.html

健康寿命の引き上げに向けた施策

厚生労働省保健局が2019年2月25日に「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会の開催について(案)」を提出した。(*1)

(*1)厚生労働省保健局「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会の開催について」
https://kaigonews.joint-kaigo.com/_src/14138/0000111.pdf?v=1551220095854

国は市町村が運営する介護保険の総合事業をさらに推進し、健康寿命の延伸に向けた施策の柱に育てる構想を抱いているようだ。

現在市町村の総合事業では健康教室や認知症カフェなど、地域のニーズに合った高齢者が集える「通いの場」の取組みを多数実施しているが、今後は民間のスポーツクラブなども取り込み健康寿命を引き上げていく狙いだ。

現在民間のフィットネスクラブは生活関連サービス業の位置づけだが、国は今後健康の維持向上を図るヘルスケア産業として民間のフィットネスクラブを創出し、膨らみ続ける社会保障費を「あるべき医療費・介護費の実現」に繋げたい意向である。(*2・P10)

(*2・P10)経済産業省における ヘルスケア産業政策について
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/01metihealthcarepolicy.pdf

デイサービス事業への影響は?

しかし逼迫している社会保障費を抑えるため手当たり次第可能性のある産業に手を伸ばし、行き詰った財政を何とかしたいという国の考えは理解できるが、介護保険事業者の経営状況も考えながら行っていただきたい。

フィットネスクラブへ参加する利用者が増えればデイサービスに訪れる者は減少し、経営不振に陥るデイサービス事業者は更に増加すると思われる。(*3)

(*3)東京商工リサーチ2017年度「老人福祉・介護事業」の倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180409_06.html

もともとあるデイサービスをないがしろにして、介護給付費を使用しないヘルス産業に位置づけた民間のフィットネスクラブへ丸投げするのは如何な事か。
健康寿命を延ばすことには賛成であるが、慌てて進めるのではなく各産業の連携を深めてから行っていただきたい。

例えばデイケアやリハビリに特化したデイサービスなどで十分身体機能が維持向上されている利用者を、民間のフィットネスクラブへ移動してもらうということも考えられる。
実際通い慣れた場所から別の場所へ移動する事に利用者や家族は抵抗を感じていて、話を進めたくても難しい場合が殆どであるが、国の方針であれば仕方ないので移動に応じるであろう。

もし民間のフィットネスクラブで身体機能が落ちてしまった場合は、元々いたデイケアやデイサービスへ優先的に戻れるような仕組みにしておけば、利用者も安心して移動できる。
そうなればデイケアなどに空きがなく断わられていた利用者も利用が可能となり、身体機能が安定するまで介護護保険サービス事業所で専門職に見守られながらリハビリを行うことができる。

職員や利用者が混乱しないような仕組みづくりを

要は個人のPDCAサイクルだけでなく、地域の循環サイクルも作ってしまうのが良い。
身体機能レベル別に利用者を振り分けて、各産業の受け入れ基準レベルに該当する利用者が利用できるようにし、各産業間で連携を図りながらレベルが変わった時には速やかに移動できるような仕組みなら混乱が起きない。

例えば身体機能レベル1~3の利用者は総合事業やヘルスケア産業サービスを利用する。
レベル4~6の利用者はリハビリ特化型のデイサービスを利用する、レベル7~8の利用者はデイケアを利用するといった具合だ。

昨今では介護保険サービスの多種多様化が進み、サービス事業所の特徴が分かりづらく選択するのに困ってしまうほどである。

そのためある程度利用できるサービスをくくっても利用者ニーズから外れることはないと考える。
利用者や介護現場を混乱させるのではなく、誰にでも分かりやすい政策を打ち出してほしいと願う。

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