黒字施設でも職員の負担は大きい?小規模多機能型居宅介護の経営状況について

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黒字施設でも職員の負担は大きい?小規模多機能型居宅介護の経営状況について

小規模多機能介護の経営、登録率や定員規模などで明暗 福祉医療機構

福祉医療機構は今週、小規模多機能型居宅介護の2017年度の経営状況を調べたリサーチレポートを公表した。

赤字の事業所は全体の41.2%。前年度とほぼ同じ水準だった。利用者の登録率や要介護度、主だった加算の算定実績などが要素としてやはり大きく、定員規模によっても明暗がくっきり分かれた − 。改めてそう分析している。

調査は福祉医療機構の貸付先のうち、開設から1年以上が経過している706施設が対象。

黒字の事業所と赤字の事業所を比べると、登録率に顕著な差がみられる。黒字が86.4%、赤字が74.7%。11.7ポイントの開きがあった。上がれば上がるほど赤字の割合が減っていく。言うまでもなく登録率は引き続き小多機のKPIだ。

利用者の平均要介護度をみると、1.8を下回るところで赤字の割合が多くなる傾向がみられた。黒字の事業所では、総合マネジメント体制強化加算や訪問体制強化加算、認知症加算の算定率がやはり高い。こうした加算の取得状況と要介護度のレベルが、収入の多寡に大きく影響しているとみられる。

このほか、事業所の定員規模ごとに赤字の割合をみると、定員29人が29.5%、定員25人が48.2%と大きな違いがあった。福祉医療機構はレポートで、「29人のところは、スケールを活かした柔軟なサービス提供が効率的な職員配置、各種加算の取得などにつながり、それが経営の安定化に結びついている」と指摘。登録率や要介護度を上げていく方策としては、医療的ケアのニーズに対応していくことなどを提案している。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg377.html

小規模多機能型居宅介護の経営状況について公表

独立行政法人福祉医療機構が、2019年2月27日に「平成29年度小規模多機能型居宅介護の経営状況について」のリサーチレポートを公表した。(*1)

(*1)独立行政法人福祉医療機構「平成29年度小規模多機能型居宅介護の経営状況について」
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/190227_No010.pdf

通いを中心に訪問・宿泊・機能訓練などのサービスを提供する小規模多機能型居宅介護は地域密着型のサービスであり、住み慣れた地域で長く暮らしていくことを目的に創設された。
このため利用できる施設の基本は、居住地の施設と決められている。

利用料は月謝制で月単位となっており、月に何度利用しても利用料は変わらない。
利用頻度や内容は利用者の状態や希望により柔軟に対応されることになっている。

小規模多機能型居宅介護の最大の特徴は、自宅に訪れる職員・通所サービスの職員・ショートステイの職員が同一であることだ。

そのため認知症高齢者にとっては顔見知りの職員にいつも介護してもらえるため不穏になりにくい、重度疾患のある高齢者にとっては同一職員が介助を行うことにより、身体状態の変化にすぐに気付けるというメリットがある。

4割が赤字経営、一方で黒字の事業所は職員の負担大?

しかし経営状況は悪く、全体の約4割が赤字経営との結果であった。赤字の要因としては定員規模・利用率・加算算定の有無などとしている。

月単位報酬の小規模多機能型居宅介護で黒字にするには、まず定員規模を最大の30名として介護度の高い利用者の登録人数を増やすことは理解できるが、加算の算定についてはどうだろうか。

加算の中でも1000単位/月を算定できる訪問体制強化加算が収益に大きな影響を与えると思われるが、訪問体制強化加算の算定要件は以下の通りである。(*2)

  • 看護サービス以外で訪問サービスの提供に当たる常勤の従業者を2名以上配置していること
    (従業者は保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を除く)
  • すべての登録者に対する訪問サービスの提供回数が合計で1月200回以上であること
  • 看護小規模多機能型居宅介護事業所が同一建物に集合住宅を併設している場合には、登録者のうち同一建物居住者以外の者の占める割合が50%以上であること
  • 同一建物居住者以外の者に対する訪問サービスの提供回数が合計で1月200回以上であること

(*2)看護小規模多機能型居宅介護の報酬・基準について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000184014.pdf

次にレポート結果を見てみたい。
利用者10名に対する職員合計数は黒字施設の方が少ないのである。黒字施設の方が赤字施設より利用者1人に対して少ない職員数で運営をしている。

これは利用者の定員数や利用率が高く訪問回数を月に200回以上行っている黒字施設の方が、職員の負担が大きいということになる。
それほど努力をしなければ黒字経営は難しいというのは残念な結果だ。

本来利用者の満足のいく介護サービスを実施し、地域でいつまでも暮らすことが目的のはずである小規模多機能型居宅介護が、経営を黒字にするために苦労を強いられている。

利用者を増やしづらいという側面も

また、小規模多機能型居宅介護には登録利用者を増やしづらいというデメリットがある。
それはケアマネが小規模多機能型居宅介護の施設ケアマネであるからだ。

そのため居宅ケアマネから紹介されるケースが少ない。
この状況を打破するためには地域包括支援センターに頑張ってもらい、相談のあった利用者をどのサービスに結びつけるか最良の判断をしてもらう必要がある。
もちろん小規模多機能型居宅介護のケアマネも積極的に地域包括支援センターや居宅ケアマネと連携を図っていくことが必須だ。

小規模多機能型居宅介護の運営をこれ以上逼迫させないためにも、比較的孤立しやすい状況にある小規模多機能型居宅介護の今後のあり方に国も一石投じていただきたい。

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