介護「生産性向上ガイドライン」公表予定|職場環境改善を行う前の必須事項は?

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介護「生産性向上ガイドライン」公表予定|職場環境改善を行う前の必須事項は?

田中滋氏「答えは生産性向上しかない。でもそれは介護サービスの画一化ではない」

介護現場の生産性向上に力を入れる厚生労働省が11日に都内で啓発イベントを開催。介護報酬を議論する審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の会長、埼玉県立大学の田中滋理事長が基調講演を行った。

田中理事長は講演のなかで、75歳以上の人口の増加や生産年齢人口の減少が加速していく今後を見据え、「働く人がどうしても足りなくなってしまう。答えは生産性向上しかない」と強調。そのうえで次のように語った。

「サービスを画一的にしろということか? 要介護者はそれぞれ性格も体つきも状態も違うのに、それを無視して同じサービスをやれということか? これはよくある反論で、心意気のある優れた介護職員にそう捉える人が多い。でも決してそうではない。生産性向上はサービスの質を上げるため、仕事の過度な負担を減らすため、介護の価値を高めるために取り組む。よりきめ細かく対応できるよう、個々の利用者の変化に柔軟に対応できるよう、色々と段取りをしておこうということ」

田中理事長はこのほか、「働く人の誤解や反発を招いてしまってはいけない。なぜ生産性向上なのか。サービスの質を無視した画一化では決してない。本来の目的をきちんと伝えていかないと失敗する。事業者は自分たちの理念や行動指針を現場に注意深く説明しないといけない」とも述べた。

厚労省はこの日のイベントで、施設サービス向け、居宅サービス向け、それぞれの「生産性向上ガイドライン」を初めて公表した。現場で実践すべきノウハウを冊子にまとめたもの。現在、ネットでの公表に向けて準備を進めている。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg390.html

「介護分野における生産性向上協議会」を開催、「生産性向上ガイドライン」をネットで公表へ

厚生労働省は3月11日に品川インターシティホールで「介護分野における生産性向上協議会」を開催した。
厚労省は、施設サービス向け・居宅サービス向け、それぞれの「生産性向上ガイドライン」を公表し、現在ネットでの公表に向けて準備を進めているとのこと。(*1)

(*1)厚生労働省主催介護分野における生産性向上協議会の開催について(お知らせ)
http://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/101_ippanboshuHP.pdf

厚労省は、「生産性向上ガイドライン」が活用されることにより下記内容の示唆が得られたとしている。

ガイドラインを作成するための事例創出のためのモデル事業を行う中で、介護分野でも生産性を向上させ、獲得した余裕時間を利用者に向き合う時間や職員同士の情報共有の時間に使うことで、利用者について新しい発見や、職員の気持ちにゆとりが生まれるなどの成果もありました。また、事業所の課題解決のための取組は、職員間の風通しを良くし、働きやすい職場を作り、働く人のモチベーションを高めることにもつながり、ひいては、介護サービスの質の向上や人材不足の解消につながるという示唆も得られました。

※引用元:厚生労働省主催介護分野における生産性向上協議会の開催について(お知らせ)

ネットでの公表がまだされていないため、平成28年度厚生労働省委託事業として株式会社NTTデータ経営研究所が平成29年9月に公表している「介護サービス事業における生産性向上に向けた調査事業報告書」(*2)を拝見した。

(*2)介護サービス事業における生産性向上に向けた調査事業報告書
http://www.keieiken.co.jp/kaigoseisansei/pdf/care_report.pdf

介護サービス事業における生産性向上に向けた調査事業は、製造業で用いられる生産性向上の取り組みを介護現場の価値に即して行われたと記されている。
特に「サービス事業所現場の管理」に注目し、分析・手法の検討・実際の現場課題の抽出・今後の方向を調査研究したとのこと。

また、現場の協力を得て調査研究するには「生産性向上」を「介護労働の価値を高める」に読み替えた結果、現場職員等が「生産性向上」の概念を理解する糸口となったとしている。

それぞれの労働価値を高めるために

確かに生産性の向上だけでは利用者を差し置いて合理的に業務を進め、残業せずにさっさと帰ろうというイメージになってしまうが、「介護労働の価値を高める」に読み替えるのであれば、対利用者も含まれてくるので分かりやすい。

取り上げられていた事例では、業務分担・業務フローの見直し・連携・協働などがあったが、「既に行っている」という事業所も多いのではないかという印象のものが半数以上であった。
また、どれも大幅な向上ではなく少しずつゆとりの時間を見出していくといった内容のものだ。

しかしこの「既に行っている」という概念を根底から変えていき、チリも積もれば山となる精神でゆとりの時間を見出し、職場環境を変えていかなければならない。

そのためには具体的な改善案も勿論重要であるが、その前に事業主を含めた全職員の意識改善が必須である。
全員が一致団結して「介護労働の価値を高める」ことに重要性を感じていなければ、協力体制のないまま一部の職員だけで行われても意味をなさない。

また、併せて改善案の周知徹底も必須となる。
全職員に改善内容が正確に確実に伝わらなければ、取り組む職員とそうでない職員が出てきてしまい、結果継続できず無駄に終わってしまうかだら。

介護労働の価値を高め職場環境を改善するためには、事業所全体が同じ方向を向いて士気を高める必要が第一条件であると考える。

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