質の高いケアマネジメントとケアマネの負担軽減について〜これからのケアマネ不足を懸念

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質の高いケアマネジメントとケアマネの負担軽減について〜これからのケアマネ不足を懸念

論点にケアマネの負担軽減 包括の人員体制の強化も 厚労省

厚生労働省は20日、2021年度の制度改正に向けた協議を進めている社会保障審議会・介護保険部会で、ケアマネジメントのあり方を俎上に載せた。

目下の課題として、ケアプランや給付管理に伴う書類の作成、利用者宅への訪問、サービス担当者会議の開催、医療機関との連携などで重くなるケアマネジャーの負担に言及。「業務負担の軽減をはじめとする環境整備」を重要な視点に組み込み、ケアマネがその役割を効果的に果たせるようにする施策を検討していく意向を示した。

このほか、居宅介護支援で新たに利用料を徴収する是非を取り上げるよう求められていると改めて報告。「これを受けた検討を行う必要がある」と説明した。

□「予防マネジメント切り離すべき」

厚労省はこの日の会合で、前線の要として期待される役割が一段と増えている地域包括支援センターについて、「業務内容の精査や人員体制の強化が課題」との認識も示した。

委員の多くがこれに賛同。「介護予防ケアマネジメント業務を切り離すべき」「地域のマネジメント機能、つながり作り機能などに特化すべき」「予算を増やさないといけない」といった声があがった。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg407.html

質の高いケアマネジメントに向けて

2019年3月22日に第76回社会保障審議会介護保険部会が行われた。(*1)

(*1)介護予防・健康づくりと保険者機能の強化 平成31年3月20日 厚生労働省老健局
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000490338.pdf

今後増え続ける高齢者の支援について、地域のつながり機能・マネジメント機能を強化していく考えだ。
検討テーマの主要検討課題としては、

・地域包括支援センターの機能強化
・ケアマネジメントの在り方、自立支援・重度化防止に向けた質の高いケアマネジメントの実現
・総合事業(介護予防・生活支援サービス事業)の効果的な推進
・介護予防(一般介護予防事業等)の推進
・保険者機能強化推進交付金の現状
・交付金の更なる機能強化に向けた課題

※引用:介護予防・健康づくりと保険者機能の強化 平成31年3月20日 厚生労働省老健局

といった項目が挙げられている。

ケアマネジメントの在り方、質の高いケアマネジメントの実現についての現状と課題では、質の高いケアマネジメントを行う必要があるが、ケアマネの負担が更に増大するとしている。

ケアプランはどのように作成される?

地域包括支援センターのケアマネージャーが作成する介護予防(要支援者)のケアプランは、「ケアマネジメントA(原則的な介護予防ケアマネジメント)」「ケアマネジメントB(簡略化した介護予防ケアマネジメント)」「ケアマネジメントC(初回のみの介護予防ケアマネジメント)」の3パターンだ。(*2)

(*2)介護予防・日常生活支援総合事業における介護予防ケアマネジメント
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1081&dataType=1&pageNo=1

利用者の状態に合った利用するサービス内容でパターンが選択されるが、介護予防・生活支援サービス事業の指定を受けた事業所のサービスを利用する場合などは、Aのケアプランを作成する必要がある。

Aのケアプランには原案の作成がある他、担当者会議や3ヶ月に1度のモニタリングを行う。また、介護給付(要介護者)のケアプランも同様に原案作成・担当者会議・1ヶ月に1度のモニタリングなどがある。

業務超過な状況でクオリティを求めるのは現実的なのか

ここで千葉市の千葉市老人福祉施設協議会が行った「2018 年介護支援専門員労働実態調査」があるので、一つのサンプルとして見ていただきたい。(*3)

(*3)「2018 年介護支援専門員労働実態調査」千葉市老人福祉施設協議会
http://www.chibashi-kaigo.org/shiryou/201811jitutaicyousa.pdf

1人のケアマネの平均担当利用者数は30~39人であり、相談対応やモニタリングなど日々行われる業務に要する時間が最低101.75 時間、新規受け入れのアセスメントや原案作成・更新時にかかる業務時間が17.75 時間の計119.5 時間との結果が出ている。

これに記録作成や給付管理などの時間を加えると、1ヶ月の労働時間は有に199.5時間を超えるとしている。

これは一つの例ではあるが、現時点でもこれだけの業務超過がある中で、質の高いケアマネジメントを求めるのは酷である。
上記実態調査の結果では、ケアマネ業務の負担を軽減するには利用者担当数を25名までに減らすと無理なく業務が行えるとされている。

しかしそのためにはケアマネを増員しなくてはならないのだが、今年度からケアマネ試験の受験資格の変更、2019年10月からの介護福祉士の新処遇改善加算などでケアマネのなり手は減少していくと思われる。

質の高いケアマネジメントは大切だが、利用者と介護保険サービスを繋ぐケアマネ不足も、今後解決しなくてはならない大きな課題になると考える。

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