介護福祉士の受験資格「実務者研修・介護過程Ⅲ」の演習に感じる違和感

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介護福祉士の受験資格「実務者研修・介護過程Ⅲ」の演習に感じる違和感

介護福祉士の国試、合格率が過去最高を記録! 約7万人が新たに資格を取得

厚生労働省は27日、今年度の第31回介護福祉士国家試験の結果を発表した。

9万4610人の受験者のうち、合格したのは6万9736人。合格率は73.7%で過去最高を記録した。

介護福祉士の国試をめぐっては、現場で働きながら資格を目指す「実務経験ルート」の要件に最長で450時間の「実務者研修(*)」の修了が加えられた2016年度、受験者数が一気に半減して波紋を呼んだ経緯がある。それから受験者数は2年連続の増加。ただし、依然としてピーク時の6割程度の水準にとどまっているのが現状だ。

* 実務者研修
初任者研修や旧ホームヘルパー2級課程を修了していれば320時間程度となる。さらに、旧ヘルパー1級課程を終えていれば95時間程度、基礎研修を終えていれば50時間程度まで短縮される。

今回の合格者の内訳は、女性が70.4%、男性が29.6%。施設の介護職員やヘルパーが8割強を占め、養成校・福祉系高校を出た人は約1割となっている。年代別では27.5%の40代が最多。以下、20代が24.9%、30代が20.5%、50代が16.5%などと続く。60代以上で資格を取った人も3.3%、2319人いる。

過去31回を全てあわせると、受験者数は246万6358人、合格者数は136万885人。合格率は55.2%。

□ベトナム人の合格率、養成校を上回る

EPA(経済連携協定)の枠組みで来日して資格を目指した外国人の結果をみると、合格率は前回より4.7ポイント低い46.0%となっている。578人の受験者に対し266人が合格。合格者は日本で長く仕事を続けていくことが可能となる。

合格率を国別にみると、インドネシアが33.1%、フィリピンが40.3%、ベトナムが87.7%。入国時に求めている日本語スキルが他より高いベトナムは、日本人も含めた全体の合格率(73.7%)、あるいは養成校の合格率(83.7%)を上回る非常に良い成績を出している。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg410.html

介護福祉士国家試験、合格基準や筆記試験の内容は?

2019年3月27日、第31回介護福祉士国家試験の合格発表が行われた。
受験者数は94,610人、合格者69,736人で、合格率は73.7%だ。(*1)

(*1)第31回介護福祉士国家試験合格発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000198330_00001.html

今回の介護福祉士国家資格の筆記試験合格基準は、125点中72点以上の獲得と11科目群で必ず1問以上の回答があった者。
実技試験は100点中46.67点以上を獲得した者である。(*2)

(*2)第31回介護福祉士国家試験の合格基準及び正答について
http://www.sssc.or.jp/goukaku/VB94iB7GQSx3hQ8gkPJtpBsnbHEs2E/pdf/k_kijun_seitou.pdf

筆記試験の11科目群では・人間の尊厳と自立・介護の基本・コミュニケーション技術・認知症の理解など、介護の専門職として必要な科目で構成されている。

また、実技試験では介護が必要な利用者を想定した問題が出題され、試験官を相手に実際に介助を行う。
(出題例:右上下肢に麻痺があり移乗は一部介助・移動全介助。ベッドから車椅子に移乗し移動してください。など毎回異なる問題)

これまで実技試験では緊張からうまく実演できなかったという声もあったが、2016年の介護福祉士国家資格から受験資格が変更となり、実務経験が3年以上の者は実務者研修修了と合わせての受験資格となった。

そのため実務経験ルートで受験する殆どの者は、実技試験が免除されている。
介護の専門分野を学び・経験を経て、更に実務者研修で学びを深め国家資格を受験するのだ。

演習内容に疑問、もう少し高度な技術を学べるようにすべき

しかしながら介護福祉士は個人により介護技術の差が大きい。
介護技術が未熟な介護福祉士は、危険な介助で「ヒヤリ・ハット」を頻回に報告している。

同じ疾患であっても利用者ごとにADL(身体機能)に違いがあり介助方法が微妙に異なるが、国家資格を得た介護福祉士には基本の介助技術に加え、イレギュラーな介助や高度な介助もできるのではないかと他職種の者は思っている。

そのため全介助の重度利用者が初めて施設にやって来た時などは介護福祉士が呼ばれることがあるのだが、残念ながら危うい介助を行う介護福祉士もいるのだ。

介護福祉士国家資格の受験資格で必要になる実務者研修のカリキュラムの中に、45時間の介護過程Ⅲ (スクーリング)がある。(*3・P12)

(*3・P12)第3回福祉人材確保対策検討会(H26.7.1)資料1「介護福祉士資格の取得方法について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/siryou1_6.pdf

ここでは演習を行うが、いくつか実施校の演習内容を拝見したところ、介護技術の演習については椅子からの立ち上がりの介助や椅子から車椅子への移乗、杖歩行の介助など基本部分のみであった。

自立支援を念頭に適切な介助方法や技術を改めて学ぶのは必要な事であるが、もう少し高度な介護技術について学べる内容にすべきではなかろうか。

受験資格の変更に伴い、研修内容の精査も必要では?

2016年以前の実技試験を受ける者が多かったころは、仕事終わりに先輩介護士が熱心に様々なシチュエーションの介護技術を受験予定者に指導していた。
筆記試験を終え実技試験までの約1か月間、時間さえあれば指導している姿を見かけたが、現在の受験資格ではそういった技術の伝導を行う必要もなくなってしまっている。

また杖歩行の介助などは、基礎となる介護資格のカリキュラムの中で学んでいるはずであり、しかも実務者研修を受講する者たちは3年の実務経験があるのだ。

重複するが、実務者研修のカリキュラムの介護過程Ⅲ (スクーリング)45時間の中で、もう少し高度な介護技術を学べるようにするべきである。
そうすれば、腰痛予防や介護福祉士としての自信、介護福祉士の高度な技術が専門性を高め、介護福祉士のイメージアップにも繋がるのではないかと考える。

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