介護現場も10連休への対応を急ぐ|想定される問題は「医療連携」よりも「人材不足」では

更新日:
介護現場も10連休への対応を急ぐ|想定される問題は「医療連携」よりも「人材不足」では

急変にも備え連携を 10連休への対応を介護現場に改めて要請 厚労省

4月27日からスタートする10連休まであと1ヵ月強。多くの介護施設・事業所が現在、必要な人員の確保や緊急時の動き方の確認などに力を注いでいる。今年は前例のない長さで途中の平日もない。いつものゴールデンウィークとは異なる、と捉えておくのがやはり無難だ。

厚生労働省は20日、来る10連休への備えを現場に改めて促す通知を全国の自治体に発出した。利用者が必要なサービスを受けられなくなる事態を避けるよう、地域の関係者で連携して体制を整えておくよう呼びかけている。介護保険最新情報のVol.702で周知した。

厚労省は既に、救急をはじめとする医療提供体制の確保を求める通知を都道府県などに出している。

この中では、患者に対応できる病院・診療所はどこか広く共有しておくことや、連休中に関係者の間で連絡を取れるようにしておくことなどを要請。在宅の患者に対しては、人工呼吸器や酸素供給装置などに万が一の不具合が生じてしまうことも考慮に入れ、対応可能な医療機関・事業者の連絡先を伝えておくよう勧めている。

こうした内容は介護の現場でも参考として使えそうだ。厚労省は今回の通知で、「医療機関などとの連携協力が必要」と改めて強調。地域の実情に応じて柔軟に体制を作って欲しいと呼びかけている。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg408.html

緊急搬送への対応や一時的な人材不足に懸念

平成31年3月20日付けで、厚生労働省老健局長より全国の自治体宛てに「本年4月27日から5月6日までの10連休における介護保険サービス等提供体制に関する対応について」が発信された。(*1)

(*1)本年4月27日から5月6日までの10連休における介護保険サービス等提供体制に関する対応について
http://www.care-mane.com/pdf/feature/q&a/vol702.pdf

介護サービスに関して、今般の10連休において利用者の処遇に支障を来さないよう、医療機関等との連携協力体制の確保を改めて周知する内容だ。

介護保険サービス事業所は、殆どの事業所が365日シフト制で稼働している。通所サービスでは日曜休み、訪問サービスでは日・祝休みのところもあるが、現場では今年の10連休が例年より特別休みが増えるという感覚はない。

おそらくケアマネの事業所も保険請求の締め日に間に合わなくなるため、数日間は出勤する事業所が多いと考える。

問題は医療機関の休診と保育園や学童保育が休みになることだ。医療機関が休診になると利用者の急変対応がままならなくなる。救急搬送で対応するとしても、受け入れ先が決まらない・遠方の医療機関での受け入れなどということが考えられる。

また、保育園や学童保育が休みになると、小さい子供のいる職員の出勤がままならず、人員不足が発生する。普段から連休中はショートステイの利用者が増えるが、人員不足のために受け入れ制限をしなければならない事業所もあるはずだ。

考えられる対応策は…

対応策の1つとしては、入所している利用者の家族に協力してもらうことが考えられる。状態の落ち着いている介助量の少ない入所利用者には、1~2泊自宅で過ごしてもらうのは如何か。

外泊では福祉用具などのレンタルができないという問題もあるが、1/4の利用者が外泊すれば100床の施設なら25名・1日当たり2~3名の利用者が外泊することになる。その間小さい子供のいる職員が休暇を取れれば人材不足も少しは軽減され、質の良いサービスを提供できる。

2つめは主治医と急変時の対応策を確認しておくことだ。かかりつけの病院が休診でも、主治医が不在でも診療してもらえる体制を予め確認しておけば安心である。

また、連休前に定期受診の予定があるのならば、薬が切れないように多めに処方してもらうことを忘れてはならない。

根本的な介護人材不足が表面化する形に?

ところで今回の厚労省から発信された「10連休に対する医療機関等との連携協力体制の確保」の周知の連絡であるが、危機的意識が低いのは行政側のようである。
日本医師会では事前に「考えられる課題」を抽出し、行政に注意喚起や連携の要請を行っている。(*2)

(*2)10連休が国民生活に支障を来さないよう努める | 日医on-line
http://www.med.or.jp/nichiionline/article/008365.html

また、日本医師会地域医療課が都道府県医師会を対象に行った「2019年10連休対策に関するアンケート」結果では、連休中の外来について従前通りの予算を確保し「休⽇夜間急患センター」・「在宅当番医制」等で対応する医療機関が殆どだ。(*3・*4)

(*3)⽇本医師会地域医療課2019年10連休対策に関するアンケート
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20190109_21.pdf

(*4)2019年10連休に関するアンケート結果
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20190109_22.pdf

そうなると介護保険サービス等提供体制で、「10連休において利用者の処遇に支障を来さないよう」に必要なことは人材の確保であり、行政が運営している保育園や学童保育施設と利用者家族との連携だ。

思うように連休が取れないことも介護職の離職率が高い要因でもある。給料面での処遇が改善された後は、休暇の取りやすい職場環境を行政・地域を含めて考えていくべきである。

Designed by Freepik