これからの「地域づくり戦略」について厚労省発表〜普及には運営側のサポートが不可欠

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これからの「地域づくり戦略」について厚労省発表〜普及には運営側のサポートが不可欠

集い・互いがキーワード! 厚労省、「地域づくり戦略」発表 先進例を多く紹介

効果が大きい先駆的な取り組みをどうすれば広く全国へ普及させていけるのか? そうした問題意識から策定に着手したという。

厚生労働省は19日、都道府県や指定都市などの介護・高齢者福祉の担当者を霞ヶ関に集めて開催した政策説明会で、「これからの地域づくり戦略」を発表した。点在する優良ケースを多く盛り込んだ事例集。地域で課題を感じている人に参考にして欲しいと呼びかけている。

「これは自治体の方、現場の方とのコミュニケーションツールだと考えている。地域づくりのために何ができるのか、この戦略をベースに皆さんと一緒に議論していきたい」

老健局の大島一博局長はそう説明。「実際に活用しながらどんどん進化させていく。多くの関係者の意見を聞く中で修正し、何度も繰り返し版を改めていきたい」と語った。

□地域の“通いの場”が大きな柱

今回の新たな「地域づくり戦略」は、「集い編」「互い編」「知恵を出し合い編」の3部作となっている。

最初の「集い編」は、体操などの“通いの場”を地域に数多く設けていくことが最大の柱。“通いの場”の具体像として、

○ 軽い体操、健康教室、料理教室、サロン、お茶会などメニューは様々
○ 歩いて5分〜10分で行ける身近な場所
○ 住民がお客さんではなく主体となることも重要

などを例示した。都心、大規模団地、中山間地域、積雪地など、それぞれの実情を勘案した工夫も紹介。「最初は人が集まらないこともあり得るが、地道に取り組みを続けることが大事」とし、各地で生まれた有効な運営アイデアを多く掲載している。

第2部の「互い編」は、住民どうしの互助を育んでいく取り組みが目玉。最後の「知恵を出し合い編」は、地域ケア会議をより有効に機能させるノウハウを詰め込んだ内容となっている。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg404.html

3つの視点からこれからの地域づくりを

2019年3月19日に厚生労働省講堂にて全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議が行われた。
会議の別冊資料に、自治体によって大きな差がある地域づくりの現状を踏まえ作成された「これからの地域づくり戦略」がある。(*1)

(*1)これからの地域づくり 集い・互い・知恵を出し合い 3部作 1.0版
https://kaigonews.joint-kaigo.com/_src/15716/tiikidukurisennryaku.pdf?v=1553036234165

積極的に取り組んでいる自治体の取組が全国の自治体にも広がることを目的として、参考事例を基にまとめられたものだ。

資料は「集い編」・「互い編」・「知恵を出し合い編」の3部作になっている。
いずれも上手く活用されるようになれば、健康寿命の延伸と増え続ける介護費用全体の抑制・地域の活性化に繋がる。

「集い編」では、高齢者が参加できる「通いの場」の創設を目指す。

体操教室やサロン・趣味の教室など、高齢者が気軽に集まれる「通いの場」作りの参考事例が取り上げられている。上手く活用されている参考事例の地域では、地域住民だけでなく自治体や多くの関係者が関わっているようだ。

自治体や関係者が主体になることは不可欠

地域の活動を継続するには自治体など関係者が主体となって関わることが不可欠だと考える。私自身の地域では、3年前から始まった3つのサロンを、次年度から開催頻度を減らしていく方向で話し合いがもたれた。

理由は参加者が増えず、毎回同じ顔ぶれの数名しか集まらない。活動の運営を担っている町内会役員も高齢者が多く、負担になっているとのことだ。

活動は町内会内の集会所で月に1度サロンを開催し、町内会役員の役割はお茶の支度や会場準備などである。
それを目的別の3サロン分、月に3度町内会役員達は交替で担当するのだが、高齢化している町内会役員たちでは賄いきれなくなってきている。

「これからの地域づくり戦略」の資料の中に、「最初は人が集まらないこともありうる。 口コミで徐々に利用者を増やすなど、地道に取り組みを続けることが大事」とあるが、それよりも自治体職員などが介入し運営側をサポートしていくことが先決だ。

適切な情報発信も求められるところ

また、「互い編」の制度を活用して新たな「互助」を生み出し育てていくことについては、参加しやすいボランティア活動の情報提供が要になると考える。

定年を過ぎ2~3年自由な暮らしを満喫し、そろそろ夫婦で何かやりたいけど何をしたら良いか分からないという夫婦に話しを聞いた。

「介護施設などでのボランティアはどうか?」と提案したが、体力的に難しいとの答えだった。夫婦は介護施設でのボランティアの内容や、他のさまざまなボランティアのことも知らなかった。また、ボランティアに対しても良い印象を持っていないと話していた。

多岐に及ぶボランティア活動の内容を魅力的に情報発信し、参加しやすくポイントも貯まるような仕組みであれば、これまでボランティアに関わってこなかった者も参加したくなるのではないだろうか。

東京都江東区の事例の「活動団体員によるボランティア情報誌の手渡しを基本」というのは非常に良い方法だ。大変ではあるが、地域の家庭を活動団体員が1件1件説明をしながら回れば、ボランティアの活動内容や参加の仕方を知らずにいた地域住民の発掘・参加に繋がる。

住民相互の力を引き出して地域づくりを進めていく良い取組が全国各地に広がるまでには、まだまだ時間がかかりそうであるが、ぜひ継続した取り組みで理想の地域づくりを実現していってほしいと願う。

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