介護現場ハラスメント対策マニュアル策定〜利用者・家族はハラスメント行為だと気づいているのか?

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介護現場ハラスメント対策マニュアル策定〜利用者・家族はハラスメント行為だと気づいているのか?

利用者からのハラスメント、特養では7割の介護職が経験 初の対策マニュアル公表

やはり多くの人が被害にあっている。現場では古くから言われていることだが、深刻な実態が改めて浮き彫りになった形だ。

介護職員らが利用者や家族から受けるハラスメントについて、厚生労働省が民間のシンクタンクに委託して行った調査の結果が公表された。

過去に利用者からハラスメントを受けた経験があるか? この問いに「ある」と答えた職員の割合は以下の通り。50%を超えているサービスが多く、最高の特養は71%にのぼっている。

次のグラフは利用者の家族からハラスメントを受けた経験のある職員の割合だ。居宅介護支援が最も高く、日頃から調整や相談にあたっているケアマネジャーが苦労している実情が読み取れる。その性質上、施設系サービスより訪問系サービスの方が高い傾向にあった。

こうした結果も踏まえ、厚労省は現場向けの対策マニュアルを初めて策定。介護保険最新情報のVol.718で10日に周知し、事業者に活用するよう呼びかけた。

(一部抜粋)

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg548.html

利用者や家族からの被害に対するハラスメント対策マニュアル

2019年4月10日、厚生労働省より「介護現場におけるハラスメント対策マニュアルについて」において、介護事業者向けのマニュアルが作成公開された。
マニュアルの作成目的は以下の通りだ。

本マニュアルは、介護現場における利用者や家族等によるハラスメントの実態を伝えるとともに、事業者として取り組むべき対策などを示すことにより、介護現場で働く職員の安全を確保し、安心して働き続けられる労働環境を築くための一助となること、ひいては人材の確保・定着につながることを目的としています。

※引用:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 平成31(2019)年3月 株式会社 三菱総合研究所

これまで職場内で起こるハラスメントの対策マニュアルはあったが、対・利用者や家族向けの対策マニュアルはなかった。
利用者や家族から受けるハラスメントは職場で起こるものと異なる課題として、今回「介護現場におけるハラスメントマニュアル」が作成公開されたのだ。

ちなみに「本マニュアルにおける介護現場におけるハラスメントの定義」として、身体的暴力・精神的暴力・セクシャルハラスメントのそれぞれの項目での行為が取り上げられているのだが、注意書きには「※1 認知症等の病気や障害のある方による行為も含みます。」とされている。

そのためマニュアルに書かれているハラスメント行為には、本人が分からずにしている行為も含まれているのだが、読んだ人(特に利用者や家族)が「大げさに書かれている」・「病気なのだから仕方がない」と受け止め、実際ハラスメントなどはさほど行われていないと思ってしまうのでは、いささか困る。

自分の行為がハラスメントだと自覚できるかどうか

それでは筆者が目にした(又は経験した)利用者・家族からのハラスメントについて、いくつか紹介したい。
紹介するのは、認知症・精神疾患を患っていない利用者・家族のケースである。

ケース1:家族によるハラスメント(デイサービス利用時の朝の送迎時)
Aさん50代女性の夫B氏は、朝の送迎時間が1分でも遅れると職員に対して路上で執拗に怒鳴る。
Aさんの家に行く前にも数件立ち寄るため、道路状況や他利用者の都合により送迎時間が前後することがあるのだが、それが許せないと言う。

ケース2:利用者によるハラスメント(デイケア利用時の個別リハビリ時)
Cさん60代女性は、個別リハビリを行う理学療法士が気に入らない職員だと、怒りを露わにして大声を上げる。その後も職員の悪口を他利用者や他職員達に言いまわる。
特に新人職員をターゲットにして露骨に嫌な態度をとり、長い時は半年以上同様の行為が続く。

いずれも精神的暴力であるが、介護現場で働く職員達のやる気ややりがいを根こそぎ奪い取る行為だ。しかしハラスメントを行う利用者や家族は、自分がしている行為がハラスメントに当たると理解しているのだろうか。

上記2点のケースはいずれも何度となく話し合いの場を設けたのだが、1ヶ月もすればまた同様の事が繰り返されてしまう。
今回の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」は、介護現場だけでなく、ぜひ利用者・家族にも広めていただきたいと考える。

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