介護職員の平均給与増額、純粋に喜ぶべき?「介護職員処遇改善加算Ⅰ」の算定が困難な理由とは

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介護職員の平均給与増額、純粋に喜ぶべき?「介護職員処遇改善加算Ⅰ」の算定が困難な理由とは

介護職員の平均給与、月30万円超える 人手不足や加算で約1万円増 厚労省

初めて30万円を上回った − 。そう報告されている。

厚生労働省は10日の専門家会議で、介護職員の処遇の動向を探る調査の最新の結果を公表した。いずれかの処遇改善加算を算定している事業所で月給・常勤で働く介護職員の給与(*)は、昨年9月の時点で平均30万970円。2017年9月と比べて1万850円上がっていた。1万850円の内訳は、基本給が3230円、各種手当が3610円、一時金(ボーナスなど)が4010円となっている。

*ここでいう給与
基本給+各種手当+ボーナスなど。いわゆる手取りではなく額面。各種手当には時間外手当も含まれる。ボーナスなどが出ているところは、4月から9月に支給された総額の6分の1を足している。

月給に12をかけた年収でみると平均361万1640円。前年(348万1440円)より13万200円上がっている。

昨年度は全体で0.54%の介護報酬のプラス改定があった。処遇改善加算は拡充されていないが、深刻な人手不足もあって多くの事業者が賃上げに踏み切ったとみられる。最も高い加算(I)を取っているところが増えたことも影響した。

(一部抜粋)

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg545.html

介護職員の平均給与が30万円を上回る

2019年4月10日に、第28回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会が開催され、「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果について」報告がなされた。

調査結果のポイントは、介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅴを取得している施設・事業所の介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額が、平成29年と平成30年を比較して10,850円増になっているという点だ。(*1)

(*1)平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果のポイント(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000500290.pdf

給与等の引き上げの実施方法は、賃金水準の引き上げと定期昇給の実施が全体の91%にあたり、何とも喜ばしいことだ。
賞与や手当では「いつ貰えなくなるか不安」になるが、定期昇給などで基本給が上がるのなら安心である。

しかし増額分の内訳を見ると…

こうして賃金額が増えた介護職であるが、実は10,850円という数字には職務手当・処遇改善手当・通勤手当・家族手当・時間外手当(早朝・深夜・休日手当等)も含まれている。(*2・P12)

(*2・P12)平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000500291.pdf

「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)」を見ると、基本給は3,230円しか増えていない。
つまり確実なベースアップは、わずか3,230円だと読み取れる。

ここで一般企業の平均のベースアップ額が気になったので、経団連が毎年行っている調査結果を覗いてみた。
「2018 年1~6月実施分昇給・ベースアップ実施状況調査結果」(*3・P2)によると、月例賃金の引上げ額は7,104円だ。

(*3・P2)2018年1~6月実施分昇給・ベースアップ実施状況調査結果
https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/006.pdf

介護職の手当3,610円をベースアップ分として計算したいが、残業手当も含まれているのでは意味合いが違ってくるので、やめておく。
理由は残業をしている介護職員が数えきれないほどいるからだ。

職種間・事業所間の賃金バランスとは?

また、介護職員処遇改善加算のなかで一番加算額の高い「介護職員処遇改善加算Ⅰ」の算定が困難な理由を見ていただきたい。

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の取得(届出)が困難な理由

介護職員処遇改善加算(Ⅱ)を取得(届出)している事業所における加算(Ⅰ)を取得することが困難な理由をみると、「職種間・事業所間の賃金のバランスがとれなくなることが懸念されるため」が44.4%、「昇給の仕組みを設けるための事務作業が煩雑であるため」が37.2%となっている。

※引用:平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)

介護職員の昇給に繋がる加算であるが、職種間と事業所間の賃金バランスという理由が一番多いのは如何か。
労働環境・処遇の改善に取り組んでいる途中などという理由なら納得がいくが、職種間のバランスとは一体何なのか。

色々理由を考えてみたが及ばず、「介護職は他専門職の賃金に追いついてはいけない、追いつくと他職種から非難があがる」という考えになってしまった。

そしてこの「介護職員処遇改善加算Ⅰ」の算定を今後算定する予定かどうかを見ていただきたい。

先に取り上げた「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果(案)」の「介護職員処遇改善加算Ⅰの今後の届出予定、届出を行わない理由別、サービス種類別」では、75.5%の事業所が届出する予定はないと答えている。

国の政策が空回りしているのか、介護職員の処遇に関してサービス事業所の人間でさえ喫緊の課題であると感じていないのか不明であるが、まだまだ介護不足問題には課題が多いと感じる。

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