未届けの有料老人ホームに対する指導強化へ〜なぜ届け出を出さない?誤って入所しないためには?

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未届けの有料老人ホームに対する指導強化へ〜なぜ届け出を出さない?誤って入所しないためには?

未届けの有料老人ホーム、全国に899ヵ所 厚労省、指導の徹底を要請

老人福祉法で義務付けられている自治体への届け出を行っていない有料老人ホームについて、厚生労働省が昨年度は全国に899ヵ所見つかったと明らかにした。

前年度から150ヵ所減った。全体(1万4253ヵ所)に占める未届け率は6.3%で、これも1.4ポイント下がっている。

「今回も多くの未届け施設が確認されたが、都道府県などによる指導の取り組みも一定程度進んでいるようだ」。

厚労省はそうみている。年度末には自治体へ通知を発出。「入居者の居住の安定を確保する観点から、引き続き厳正かつ適切な指導を徹底して欲しい」と改めて要請した。介護保険最新情報のVol.708で広く周知している。

この調査は厚労省が全国の自治体を対象に毎年実施しているもの。今回の結果は、2017年7月から2018年6月までの1年間に把握された数字。

今回の期間内に新たに見つかった未届けの有料老人ホームは211ヵ所だった。届け出施設の数は過去最多の1万3354ヵ所。前回の1049ヵ所の未届け施設のうち、678ヵ所に対しては届け出を促す指導が既に行われたという。

「虐待など入居者の処遇に関する不当な行為を未然に防ぐことが目的。自治体が必要に応じて迅速かつ適切に関与できる前提となる」。厚労省は届け出を義務付けている理由をそう説明。全国の事業者に対し、「まずは必要な届け出を」と呼びかけている。

□前払い金の義務違反、4.1%

今回の調査では、老人福祉法で義務付けられている前払い金の保全措置を講じていない有料老人ホームが、全国に59ヵ所(対象施設の4.1%)見つかったとも報告されている。厚労省は「義務違反は有料老人ホーム全体の信頼を揺るがしかねない」として、速やかに改善命令など実施するよう自治体に指示した。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg530.html

未届けの有料老人ホームについて指導強化へ

2019年3月29日に厚生労働省老健局高齢者支援課より通知された「有料老人ホームを対象とした指導の強化について」では、有料老人ホームに対する指導状況等の調査結果の取りまとめが情報提供された。(*1)

(*1)厚生労働省老健局高齢者支援課「有料老人ホームを対象とした指導の強化について」
http://www.care-mane.com/pdf/feature/q&a/vol708.pdf

今回の調査結果を見ると、 都道府県などへの未届けの有料老人ホーム数は899件(平成30年度)であったとのこと。

なお、有料老人ホームの届出は老人福祉法により以下のように定められている。

第四章の二 有料老人ホーム
(届出等)
第二十九条 有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。

(引用元より一部抜粋)

※引用:電子政府の総合窓口(e-Gov)|老人福祉法

つまり未届けの有料老人ホームは、サービスを提供し始めた時点で法令違反をしているということである。
しかし何故、届出をしないのであろうか。
一般的には「届出をしていない=サービスの質が悪い」と考え、施設自ら生活環境の悪い施設だと宣伝しているように思われるが如何か。

考えられる答えとしては、届出をすることにより、施設の規模や構造設備・人員配置や衛生管理など不適合部分に指導が入り、改修工事や人件費などの費用負担が増え経営困難に陥る、もしくはそこに費用をかけたくないということだろう。

指導内容から察する環境の劣悪さ

内閣府所管の公益社団法人「全国有料老人ホーム協会」の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針新旧対照表」を見ていただきたい。2018年7月1日から適用された新しい指導指針にこうある。

なお、有料老人ホームは、老人を入居させることを目的とする施設であることから、入居要件を専ら老人に限らず、老人以外も当然に入居できるようなものは有料老人ホームには当たらない。ただし、①入居要件では老人以外も入居できるとしつつ、意図的に老人を集めて入居させているものについては施設全体について、②共同住宅や寄宿舎のように老人とそれ以外の者が混在して入居しているものであっても、施設の一部については専ら老人を入居要件とするものについては当該老人が利用している部分について、有料老人ホームとして取り扱うこととする。

※引用:有料老人ホーム設置運営標準指導指針 新旧対照表

1の内容が追加されているということは、はじめから届出をしないつもりで入居者を集め施設運営をする悪質な事業所が多いと考える。

ということは基準を満たさず安全性に欠け、生活しづらい住空間とサービス内容が提供されている可能性が高い。

なお、実際に2017年の未届けの施設に対して行われた指導内容は、身体拘束に関する対策や記録方法、入居者のプライバシー、人員配置基準と緊急時の対応、居室や廊下の面積などであり、これらを読み取るだけで劣悪な環境が伺える。(*1)

既に届出をしていない劣悪な環境の施設に入居している者は、その事実に「入居してから気づいた」・「それが当たり前だと思っている」などと感じているのだろうか。

まずはケアマネや地域包括支援センターへの相談を

「老人ホームはどこも同じだと思い入居した」「新しくできたばかりで綺麗な建物だから入居した」など、入居理由はさまざまであり、特養の入所待ちをしていたが状態が変わり、自宅での生活が困難となり、順番を待ちきれず有料老人ホームに入居した者もいると思われる。

最後に有料老人ホームの入居を検討している本人と家族に伝えておきたい。

  • どこの自治体も緊急の時はショートステイや緊急入所ができるシステムになっているので、緊急の時は慌てて有料老人ホームへ入居するのではなく、ケアマネや地域包括支援センターへ相談をする。
  • 有料老人ホームの契約をする前に、老人ホーム届出施設であり、なお且つ「全国有料老人ホーム協会(*2)」に登録している施設かどうかを確認する。