「介護業界人材不足」の実態と見通しは?企業の人手不足倒産が初の400件に

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「介護業界人材不足」の実態と見通しは?企業の人手不足倒産が初の400件に

企業の人手不足倒産、初の400件 介護を含むサービス業がトップ

2018年度は人手不足に起因する倒産が初めて400件に達した − 。

東京商工リサーチが5日にそんなレポートを公表した。前年度から28.6%増。産業別ではサービス業が105件で最も多く、介護サービス業は飲食業(23件)に次ぐ2位の12件だった。倒産に至る前に撤退した事業者も少なからずいるとみられる。

人手不足に関する倒産の内訳をみると、代表者や幹部の死亡、引退などによる「後継者難」型が269件で最多。以下、人材確保が難しく事業の継続に支障が出た「求人難」型が76件、人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が30件、中核社員の独立・転職などが発端の「従業員退職」型が25件と続く。

東京商工リサーチは、「全体の企業倒産が低水準をたどるなか、人手不足に関する倒産の増勢ぶりが目を引く」と指摘。「特に『求人難』型と『人件費高騰』型の増加が際立つ」と分析した。この2つは前年度と比べ、順に162.0%増、114.2%増となっている。

105件でトップだったサービス業以外も同様に厳しい。建設業(75件)や製造業(62件)、卸売業(59件)、運輸業(34件)なども倒産が少なくなかった。人手不足の解消は今後しばらく難しいと見込まれており、業界の枠を超えた人材の争奪戦が今後さらに激化しそうだ。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg543.html

人材不足関連の倒産件数が過去最多に

東京商工リサーチが発表した2018年度の「人手不足」関連倒産は400件。(前年度比28.6%増)
2013年度の調査開始以来、これまで最多だった2015年度(345件)を上回り、最多件数になったとのこと。

産業別の結果は下記の通りだ。

|産業別、サービス業他が最多105件

2018年度の産業別では、最多がサービス業他の105件(前年度比34.6%増、前年度78件)だった。内訳は、飲食業23件、老人福祉・介護事業12件、医療関係10件、人材派遣業9件、建築設計業などを含む土木建築サービス業7件など。

このほか、建設業75件(同4.1%増、同72件)、製造業62件(同58.9%増、同39件)、卸売業59件(同43.9%増、同41件)、貨物自動車運送などの運輸業34件(同61.9%増、同21件)と続く。

※引用:2018年度「人手不足」関連倒産:東京商工リサーチ

サービス業の中に含まれる介護・医療とは、いずれも介護人材不足に関連する。合わせれば22件と多い。

公益財団法人介護労働安定センター「介護労働の現状について平成29年度介護労働実態調査」(*1)の「訪問介護員、介護職員の採用・離職の状況」(P14/56)を見ると、1年間の採用率・離職率の差は1.6ポイントと、僅かではあるが採用率の方が上回っている。

(*1)公益財団法人介護労働安定センター「介護労働の現状について平成29年度介護労働実態調査」
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h29_roudou_genjyou.pdf

また「離職率の前年対比較」(P19/56)を見ても、事業所規模別・介護サービス別共に離職率の全体数値は前年より低下している。

しかし職員不足と感じている事業所数は前年比4.0ポイント増加の66.6%であり、介護関連事業所の半数以上が人材不足の中、事業運営をしていることになる。(P20/56)

人材不足が各事業所にもたらす悪循環

上記の結果から、僅かな採用があり若干離職率は安定してきたが、元々人材が不足しているため事業運営には支障がある。
十分に人材が潤うまでには、まだまだ人材が足りていないと考える。

介護施設の運営に関して言えば、こうした人材不足が招く問題は利用者の受け入れが困難になるということだ。
設備などは法で基準が定められているため相応に整えるが、設備投資に費やした資金回収ができるほど利用者を受け入れることができない。

無理に利用者を受け入れれば職員達が疲弊するばかりではなく、賃金など労働条件への不満が増え離職に繋がる。
また、人員に関する加算の算定基準に達しなくなり指導が入り、更に収益が減るといった悪循環に陥る。

以前、私自身が在籍していたグループ施設では、外部の経営ノウハウに精通したコンサルタントを呼び寄せ、経営に関してアドバイスや研修を行っていたが、人材が潤うまでは至らなかった。
現在は外国人労働者を増やし、なんとか人材を確保しているようだ。

地域の社会資源も盛り込んだ、適切なケアプラン作成を

しかし介護人材不足は一事業所の問題だけではない。
2025年には介護が必要な者が253万人、介護人材215.2万人であり、約37.7万人の介護人材が不足になる見通しだ。(*2)

(*2)2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について|報道発表資料|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000088998.html

もし介護業界全体の労働条件が改善されず介護人材不足が続くのであれば、根本的に要介護者を減らすことに尽力する他ない。

そのため現在国では、健康寿命の延伸のために総合事業や地域の通いの場などの取組みを開始しているが、もう一つケアマネジメント力も大切だと考える。
必要のないサービスを限度額いっぱいまでケアプランに盛り込むのではなく、本当に利用者に必要な自立支援のためのプラン作りをするべきだ。

また、地域の社会資源も大いに盛り込んだケアプラン作りを心がけることも重要である。
そのためには、インフォーマルなサービスや支援の充実が求められると考える。

今回は、国が強く推している「地域住民主体の地域作り」に辿りつく結果となった。

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