介護施設向け感染症対策「インフルエンザ予防接種」に関わる業務が煩雑になる原因は?

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介護施設向け感染症対策「インフルエンザ予防接種」に関わる業務が煩雑になる原因は?

これでカンペキ! 介護の感染対策マニュアル「改訂版」公表

現場でサービスを担っている介護職員らに積極的に活用して欲しいと呼びかけている。

厚生労働省が介護施設向けの「感染対策マニュアル改訂版」を公表した。

より使いやすいように構成を再編したほか、最新の動向・知見を踏まえて内容を更新したという。介護保険最新情報のVol.720で広く周知している。

マニュアルが改訂されるのは2013年3月以来2回目。アップデートされた部分はいくつもあるが、例えば、感染症の症状や予防、拡大防止策などについて記載の充実が図られている。

□手洗いパンフ、英語を併記

マニュアルを要約する形のパンフレットが初めて作成されたことにも注目したい。感染対策の基礎知識や咳エチケット、インフルエンザ対策といった極めて重要なポイントが、コンパクトに分かりやすくまとめられている。

手洗いや手指消毒の正しい方法をイラストで解説していくパンフレットには、初めて英語が併記された。

今後の外国人の増加を見据えた対応。PDFファイルをシェアしたりプリントアウトしたりすれば大いに役立てられそうだ。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg565.html

介護施設での感染対策について、マニュアル改訂版を公開

2019年4月15日に厚労省から自治体宛てに、「高齢者介護施設における感染対策 マニュアル改訂版(2019年3月)」の送付についての事務連絡があった。(*1)

(*1)「高齢者介護施設における感染対策 マニュアル改訂版(2019年3月)」の送付について
http://www.care-mane.com/pdf/feature/q&a/vol720.pdf

平成25年3月にとりまとめた「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」を改定し、感染症に関する新しい知見や制度改正等を踏まえた内容に見直し作成したとのこと。

自身もかつて、施設の感染症対策委員会に所属していた。
厚労省のマニュアルを基に定期的に勉強会などを企画開催し、施設全体で感染症予防に努めていたころを思い出す。

今回は感染症の一つである、インフルエンザの予防接種に関わる業務の煩雑さと対策について考えてみたい。

予防接種の流れにおける煩雑さ

インフルエンザの予防接種の準備は、10月に入った頃から始まる。
正確には9月の後半に送付する、利用料の請求・領収書と一緒にインフルエンザの案内を送付するところからになる。

その後の手続きから予防接種までの流れは下記の通りだった。

  1. 利用者本人または家族にインフルエンザの予防接種の意思確認を兼ねた申込みを行う(紙ベース)
  2. 利用者の住所のある自治体の予診票が必要なため、電話をかけ取り寄せを行う
  3. 予診票を郵送してもらえない自治体へは家族に自治体の窓口まで取りに行ってもらうよう依頼する
  4. 家族の面会時に予診票の質問事項の欄を記入してもらい、立会いの有無を確認する(字の書けない利用者家族には強制的に立会いを依頼)
  5. ワクチンの仕入れと予防接種日の割り振り調整を行い、立会いの家族へ連絡をする
  6. インフルエンザの予防接種を行う
  7. インフルエンザ予防接種済証を交付し、利用料の請求・領収書と一緒に郵送する
  8. 入所利用者が100人いる施設では、20箇所以上の自治体への予診票の取り寄せが必要であり、煩わしさを感じるのと共に、自治体窓口でしか受け渡しを行わない所もある。

    また、母体が医療法人で病院があり施設に常勤の医師がいるにも関わらず、医療機関での接種を強く言ってくる自治体もある。

    その理由は、予診票については対象者への説明が必要であり、接種機関については自治体の長が依頼した医師ではないからだ。

    4 接種の場所
    インフルエンザの予防接種については、適正かつ円滑な予防接種制度の施行のため、市町村長の要請に応じてインフルエンザの予防接種に協力する旨を承諾した医師が医療機関で行う個別接種を原則とすること。ただし、接種を希望する者が寝たきり等の理由から、当該医療機関において接種を受けることが困難な場合においては、予防接種を実施する際の事故防止対策、副反応対策等の十分な準備がなされた場合に限り、当該医師による接種を希望する者が生活の根拠を有する自宅、入所施設、入院施設等(以下「接種場所」という。)において実施しても差し支えないこと。

    (中略)

    8 予診票
    (1)インフルエンザの予防接種の実施に際しては、様式第二のインフルエンザ予防接種予診票を参考にして予診票を作成すること。
    (2)作成した予診票については、あらかじめインフルエンザの予防接種の対象者に配付し、各項目について記入するよう求めること。
    (3)市町村長は、接種後に予診票を回収し、文書管理規程等に従い適正に管理・保存すること。
    なお、予診票は、インフルエンザの予防接種の実施後5年間保存すること。

    ※引用:厚生労働省:*予防接種対策に関する情報*

    予診票の配布説明については、窓口で直接行うのが最良であるのは理解できる。
    しかし、遠方に住んでいた家族の近くの施設に入所した利用者の場合、利用者の住所のある自治体窓口まで出向く家族は大変である。

    同一県内ならまだ良いが、ひとつ跨いだ他県へ取りに行ってもらったケースがある。
    予診票を全国で統一・説明文を同封すれば郵送で可など、もう少し国に配慮してもらいたいものだ。

    また、医療機関での接種を強く言ってくる自治体は、委託契約が医療機関と定められているケースも多い。
    委託料を支払う関係もあるが、医療機関ではない施設の職員が問い合わせを行うことに疑問を感じるのだろう。

    医療機関が運営している施設での予防接種もあることがもっと周知されると共に、医療機関だけでなく常勤医師のいる医療法人の施設でも自治体との委託契約が可能になれば、予防接種がスムーズに行われる。

    強制ではないが、国で定められた高齢者のインフルエンザの予防接種。
    もう少し手間のかからないやりやすい流れにしてもらえるとありがたい。

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