ケアマネに複数事業所の料金説明を求める財務省|ケアマネの負担増、現実的な判断か?

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ケアマネに複数事業所の料金説明を求める財務省|ケアマネの負担増、現実的な判断か?

複数事業所の利用者負担の説明、ケアマネに義務化を 財務省が注文

利用者にとってのサービス価格の透明性をもっと高めていくべきではないか − 。そう必要性を訴えている。

財務省は23日の審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で、今後の介護保険制度の見直しに向けて具体策を提案した。

居宅介護支援にも言及。ケアプランを作るプロセスで、複数の事業所のサービス内容と利用者負担の違いについて説明することをケアマネジャーに義務付けるべきだと主張した。

利用者が比較検討できる機会を必ず得られるようにすることが狙い。事業所どうしの競争がより活発になることでメリットが生じると見込んでいる。来月にもまとめる政府への提言に盛り込む方針だ。

居宅介護支援をめぐっては、2018年度の改定でも利用者に対する説明責任を重視したルールの厳格化が行われている。新たな契約を交わすにあたって、

○複数の事業所の紹介を求めることが可能であること
○その事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であること

の2点を伝えることが義務付けられ、これに違反するとペナルティで報酬が減算(運営基準減算)されることになった。

今回の財務省の提案は、さらにもう一歩踏み込んだ措置をとるよう注文するもの。「利用者側の求めによらずとも、複数の事業所のサービス内容と利用者負担について説明することを義務付けるべき」と訴えている。

財務省はこのほか、居宅介護支援のケアマネジメントで新たに利用者負担を徴収することも引き続き要求している。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg562.html

利用者によるサービス選択の幅を持たせるために

2019年4月23日に開催された財政制度分科会において、財政健全化に向けた議論の中で社会保障制度の見直しについてこう提言された。

【ケアマネージャーの利⽤者に対する説明責任】

「利⽤者本位」に考えれば、ケアマネージャーがケアプランを作成・提供するに当たり、利⽤者側の求めによらずとも、単なる情報提供に⽌まらず、複数の事業所のサービス内容と利⽤者負担(加減算による差等)について説明することを義務化することにより、利⽤者に⽐較検討の機会を確保し、サービス価格の透明性を向上すべき。

※引用:財務省財政制度分科会「社会保障について」(P88)

2018年から、ケアマネージャーは利⽤者がサービスの選択をできるように、地域のサービス内容や利⽤料等の情報を提供するものとされているが、財務省は利用者が情報を求めなくても複数のサービスを説明するべきだとした。

財務省は、八百屋やスーパーで大根や人参を選ぶように、サービスを選んでほしいと思っているのだと考える。新鮮で安い大根や人参を買うように、安価で質の良いサービスを、利用者が多く中から自由に選べる仕組みを作りたい。

そうすることで事業所も質の良いサービスを安価で提供するようになり、価格競争が行われて社会保障費を抑えることができるというもくろみなのだ。

複数の選択肢に利用者や家族が混乱する可能性も

しかしケアマネージヤーにとっては、担当する地域によりサービスの種類や数は異なるが、地域の社会資源を含めた全てのサービスとその内容までを把握するのは相当大変だ。

介護報酬改定の度にサービス事業所の方向性も変更されることもあり、事業所の料金や詳細までは覚えきれないのが現状である。
この提案こそAIを活用したいものだ。

AIのタブレットを利用者に提示し、自由に選んでもらえれば簡単である。
スーパーのチラシ替わりということだ。

ただし大根や人参のように、おいしそうな物を選んで買って食べれば終わりというものではないのが介護のサービスである。
通所介護の場合は「退屈だ」、訪問介護の場合は「来たヘルパーが気に入らない」など、選んではみたもののその後もサービスを受け続けたくないということもあり得る話だ。

ケアマネージャーは利用者の生活歴や性格・既往歴・身体機能などを考慮し、利用者に合った最適なサービスを提供している。
そのため敢えて必要以上の複数のサービスを紹介する意味はないと考える。
利用者や家族が、迷い戸惑うだけだと考えるが如何か。

ケアマネだけに背負わせすぎない仕組み作りを

またケアマネージャーには、サービス以外にも情報提供や説明の機会が多くある。
介護保険制度の概要・利用料・介護認定や更新申請・区分変更申請・負担限度額制度など、利用者や家族が疑問に思ったことには何でも答えられるように日々努めている。

そのため決して怠慢ではなく、全く関係のない複数のサービスの内容まで情報を集める時間がまずないのだ。

複数の事業所のサービス内容と利⽤者負担(加減算による差等)についての説明は、各事業所の相談員や提供責任者などに任せる形で良い。
ケアマネージャーはサービス事業所が複数あるということと、サービス事業所の担当者の説明を聞く機会を調整することで良いと考える。

財務省の単一的なサービスしか提供されずに社会保障費が嵩んでいくことを懸念し、質の高い安価なサービスが提供されるための提案だということは理解できるが、ケアマネージャーにとっては厳しい内容である。

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