新加算「褥瘡(じょくそう)マネジメント加算」の効果検証〜加算算定率27.1%の理由と改善策について考察

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新加算「褥瘡(じょくそう)マネジメント加算」の効果検証〜加算算定率27.1%の理由と改善策について考察

福祉用具貸与の上限額、今年度の見直しは増税対応のみ 厚労省方針

昨年10月から新たに導入した福祉用具貸与の商品ごとの上限額について、厚生労働省は今年度の定期の改定を見送る方針を固めた。

今の8%から10%へ引き上げる消費増税を反映させる機械的な見直しのみ行う。新商品の上限額の設定は、今年度も3ヵ月に1回程度のペースで通常通り実施していく。社会保障審議会・介護給付費分科会の10日の会合で提案し、委員から大筋で了承を得た。

貸与価格に上限額を設けたのは、膨張を続ける給付費の適正化につなげることが狙い。「不当な高値をつける悪質な事業者がいる」といった指摘を受けたものだ。上限額は「各商品の全国平均額 + 1標準偏差」。厚労省はおおむね1年に1回の頻度で改定していくルールを決めたが、「施行後の実態を踏まえて検討していく」ともアナウンスしていた。

厚労省は先月、上限額の導入が与えた影響を探るための調査の結果を公表。高額な保険請求が完全に排除されたことが確認できたほか、74%の事業所が「収益が減少した」と回答していると報告した。商品カタログの価格修正・再印刷や事業所内のシステム改修が必要となり、経費が嵩んだところが多いことが明らかにされている。

厚労省はこれらを踏まえ、「引き続き影響を精査する必要がある」と判断。今年度は同様の調査を行い、定期の改定を見送ることにした。消費増税を機械的に反映させるのは10月から。担当者は「できるだけ早く新たな上限額を示せるようにしたい」としている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg549.html

各種調査研究事業の結果を公表

2019年4月10日の第170回社会保障審議会介護給付費分科会において、「平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」の結果が示され、今後の課題について話し合いが行われた。

主な調査項目は以下の通りだ。

事業No. 調査項目名
(1) 介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業
(2) 介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業
(3) 居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究事業
(4) 福祉用具貸与価格の適正化に関する調査研究事業
(5) 介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業
(6) 介護老人福祉施設における安全・衛生管理体制等の在り方についての調査研究事業
(7) 介護老人保健施設における安全・衛生管理体制等の在り方についての調査研究事業

※引用:社会保障審議会介護給付費分科会(第170回)議事次第

この調査結果の中で気になったのが、(1)介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業。「褥瘡(じょくそう)マネジメント加算について」の調査研究結果が示されている。

新加算である「褥瘡マネジメント加算について」では、加算を算定している施設が全体の27.1%であった。
殆どの施設には常勤の看護師が常駐し、褥瘡ケアも行っているはずだ。

そのため施設では加算算定をするものだと考えていたが、思いの他少ない結果であった。
今回はその理由と改善案について考えてみたい。

報酬単価の低さが算定しない理由の1つに

上記議事次第によると、まず加算を算定していない施設では、本人・ご家族への説明と署名が困難、報酬単価が低く事務量に見合わないなどが算定しない理由として挙げられていた。

この「褥瘡マネジメント加算」は、施設入所時に全ての利用者を対象に初回評価を行い、その中から褥瘡の発生リスクがあるとされた利用者に対して、その後も最低3ヶ月に1度の評価・見直しを行う必要がある。

また「褥瘡ケア計画」を他職種共同で作成し、厚労省に報告することが算定要件になっているが、報酬単位は月に10単位と少ない。

現在、施設には様々な「計画書」があり重複している部分が多い。入所後に初回カンファレンスを行い、それぞれの専門職が職域ごとのケアプランを立てる。

栄養面や日常生活の改善などが必要な褥瘡の改善プランであれば、ケアマネが作成する「ケアプラン」もしくは管理栄養士が作成する「栄養ケア計画書」に看護師が利用者の状態を追記する形にすれば、「褥瘡ケア計画」を改めて作成する必要がなく、簡易的に済まされると思うが如何か。

特に「栄養ケア計画書」には、健康状態や栄養状態の指標の一つと考えられているアルブミン値や提供する食事の形態や摂取状況なども記載されている。月に10単位の報酬ならば、追記程度で良いと考える。

本人・家族への直接の説明や署名が現場負担に

また、「本人・ご家族への説明と署名が困難」については、あまり面会に訪れない家族への対応として、「電話での説明後、郵送などでサインをもらうことが可能」と厚労省がはっきりQ&Aなどに表記すれば良いと考える。

「計画書」の説明・署名は「褥瘡ケア計画」に関わらず、他の「計画書」でも同様に必要だ。
施設により異なるが、介護老人保健施設では1名の利用者に対し3ヶ月に1度「ケアプラン」・「リハビリ計画書」・「栄養ケア計画書」が発行される。

そのため遠方でめったに訪れない家族の場合、相当な量の「計画書」が溜まる。
これが電話と郵送のやり取りで可能になれば、未サインの「計画書」が溜まっていくことが避けられるだけでなく、担当職員の負担も軽減できるのだ。

現時点では、家族への説明・サインについてはっきり手段が示されていないため、家族に連絡をとり「いつ来所できるか?」を聞いた後、担当者がその日に出勤できるようにシフト調整をしている施設もある。

グレーゾーンが多い介護保険制度であるが、現場職員が仕事をしやすい環境になる部分は細かな点まで示してもらえれば、業務の滞りが減少していくと考える。

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