
分野横断的な「丸ごと相談」を全国に整備へ 厚労省、共生社会実現へ夏にも具体策
経済社会の変容に伴い多様化・複合化している生活課題に対応する「地域共生社会」の実現に向けて、厚生労働省はこれから年末にかけて新たな施策の検討を本格化させていく。
介護、障害、子育て、生活困窮といった従来の縦割りを超えてニーズを受け止める「丸ごと相談」「断らない相談」を広く普及させることなどが柱。現場を担う市町村などがスムーズに実践できる環境を作る観点から、既存の各制度の見直しや規制緩和を俎上に載せる。
新設した有識者会議を16日に始動させた。夏までに具体策の方向性を固める。その後、法改正も視野に入れてディテールを詰めていく方針。介護保険制度の改正をめぐる動きにも影響が及ぶとみられる。
□“分野横断”ならではの課題も
議論のレールは前もって敷かれていた。厚労省は2017年に公布された改正社会福祉法で、分野をまたぐ包括的な支援体制の構築を市町村に促す努力義務を規定。この改正法の附則で、そうした包括的な支援体制を全国的に整備する手立てを公布後3年(2020年)を目処に講じるよう求められていた。
厚労省はこの間、市町村などへ補助を出すモデル事業で「丸ごと相談」などの試みを後押ししてきた。昨年度は150自治体、今年度は200自治体が参画。これで少しずつノウハウが積み上がり、いくつかの課題もみえてきている。
例えば地域包括支援センター。16日の有識者会議では、包括の機能を活かして「丸ごと相談」などを行なっている自治体の職員にヒアリングした結果として、以下のような声が紹介された。
「介護保険特別会計と一般会計から費用を支出しており、按分に関する事務的な負担がある」「会計検査の際に、『国からの交付金は高齢者を対象とした包括の業務に対してのみ支給されている。交付金の対象職員は包括以外の業務に従事させてはいけない』と指摘された」
□「創意工夫を活かせる制度設計に」
厚労省は今後、現場の仕事を妨げるこうした障壁を取り除く施策の立案を図る。「丸ごと相談」の推進とあわせて、社会参加や住まいの確保につなげる“出口支援”、専門職らが伴走していく体制の強化、地域の多様な主体を結びつけるプラットフォームの構築などについても話し合う考えだ。
担当者はこの日の会合で、「資源の状況など地域ごとの多様性を踏まえる必要がある。各自治体の創意工夫で柔軟に取り組みを進められるような制度設計にしたい」との意向を示した。
「地域共生社会」の実現に向けた取り組みが本格始動
「地域共生社会」の実現に向けて(*1)の取組が、本格的に始動したようだ。
(*1)「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)【概要】
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000150631.pdf
「地域共生社会」では、公的支援の縦割りから丸ごとへの転換、我が事・丸ごとの地域づくりを育む仕組みへの転換を改革の方向性としている。
補助具作成のフローに見直しの余地あり
自身がこれまで経験してきたなかで、もう少し柔軟な体制だとスムーズな支援ができると思ったことが何度かある。
その一つが、手足が不自由な者が使用する装具(補助具)の作成の時だ。
脳溢血などで麻痺が後遺症としてあり、今後の日常生活において下肢装具などが必要な場合、入院中に作成することが多い。
ただしその後状態が改善する、もしくはは状態が落ちてきて、新たに装具を作ることがある。また、装具が古くなった時も同様に再作成が必要だ。
上記のような時に障害者福祉で作成するのか、医療保険で作成するのかに分かれる。地域差もあるのかもしれないが、自身の勤務していた地域では障害者福祉で作成する場合、まず自治体へ申請を行っていた。
その後担当職員が本人に会い、装具が必要であるか確認する。(身体障害者認定を受けていない者は先に認定を受ける必要がある)
確認後に本人が県立リハビリセンターへ出向き、状態の確認などを行い装具作成となるが、とにかく時間がかかる。しかし負担額が少ないというのがメリットだ。
ややこしさから投げ出してしまうケースも
決して安い物ではないため、できれば障害者福祉を利用して作成することを勧めるが、1ヵ月以上も先の予約を取り遠方の県立リハビリセンターへ本人を連れていくことが難しい家族や、申請から装具が手元にくるまで半年近くかかるため待ちきれないという者には医療保険での作成を案内してきた。
医療保険で装具を作成するには、指定医師の診察を受けて装具を作成する。負担額は個人が加入している保険の負担割合であるためそれぞれ異なり、一旦全額支払う仕組みである。
3割負担の者の場合は負担額が大きくなるが、装具完成までが早い。
この装具作成の流れが非常にややこしく、家族が途中で投げ出してしまうケースや、本人が入院などして新たに申請からという事も発生する。
自身が関わった障害者福祉で装具を作成しようとしていた男性利用者は、申請から自治体の職員が来るまでの期間に1度、県立リハビリセンターへの診察を待っている期間に1度、合わせて2度入院したため、合計で3度申請を行った。
結局、変形した装具を交換したいと思ってから完成までに、約2年以上かかっている。
包括的な支援により、双方の負担が減ることを願う
これが、障害者福祉でも医療保険でも変わりなく、欲を言えば介護保険内でも同様に手続き申請などを行うことができれば簡潔になると考える。
また、近所の指定医師の診察を受けて障害者福祉のサービス内での負担額になれば、装具作成までがスムーズで負担が少なくなる。
他にも指定難病を抱えた利用者の場合、ケアマネ・保健所のワーカー・自治体のワーカーの支援体制となるのは良いが、1つ1つの事柄により担当者がことなるため話が進まないといったケースもあった。
今回本格始動した「地域共生社会」の包括的な支援・分野をまたがる総合的サービス提供の支援が行われるようになれば、分断されたサービスの合間で戸惑う利用者が減ると考える。
また、支援する側も頭を悩ますことが少しは減るであろう。